セッション情報 口演

肝 基礎2

タイトル O-212:

単純性脂肪肝の再生遅延―脂質蓄積とERストレスの関係について―

演者 濱野 美奈(大阪大学消化器内科学)
共同演者 江崎 久男(大阪大学消化器内科学), 古田 訓丸(大阪大学消化器内科学), 木津 崇(大阪大学消化器内科学), 茶谷 徳啓(大阪大学消化器内科学), 鎌田 佳宏(大阪大学消化器内科学), 吉田 雄一(大阪大学消化器内科学), 木曽 真一(大阪大学消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科学)
抄録 【目的】脂肪肝の再生障害は多くの遺伝子改変モデルで報告されてきたが,食餌誘発性脂肪肝モデルでの再生障害の報告は少なく,肝臓への脂肪蓄積そのものが再生障害の原因となるか否かについては詳細な検討がされていない.我々は食事誘発性単純性脂肪肝モデルを用い,肝臓への脂質蓄積が再生過程に及ぼす影響をERストレスに着目して検討を行った.【方法】Bl/6J mice 8週令雄に高脂肪食(HFD)または通常食(CD)を9週間給餌後70%部分肝切除(PHx)を施行し,肝再生過程を観察した.細胞増殖はBrdU免疫染色,PCNA蛋白発現,細胞周期関連遺伝子発現で評価した.細胞内シグナル伝達はErk1/2のリン酸化で評価した.ERストレスはUPR関連遺伝子発現で評価し,またERストレスを軽減する化学シャペロンであるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)の前投与による影響も評価した.【成績】1.PHx36hr後において,BrdU陽性細胞率はCD群,HFD群で各々15%,2%であった.また,CD群ではHFD群に比しPCNA蛋白発現が1.4倍(p<0.05),細胞周期関連遺伝子発現ではFoxm1が3.9倍(p<0.01),Skp2が1.6倍(p<0.05),Cyclin A2が3.9倍(p<0.01)と有意に上昇し,HFD群ではこれらの因子の発現はCD群に遅れて認められた.2.Erk1/2のリン酸化はPHx24hr後においてHFD群でCD群に比し有意に低かった(p<0.05).3.両群で再生過程において特に長鎖脂肪酸の増加を認め,パルミチン酸とオレイン酸はCD群に比しHFD群で著明に増加した.4.HFD群では再生過程でPERK-CHOP系の発現上昇を認めた.5.TUDCA前投与により,PHx後にHFD群で認めたCHOP遺伝子の発現は軽減され,Erk1/2のリン酸化や細胞周期関連遺伝子,PCNA蛋白,BrdU陽性細胞各々の発現は遅延なく認められた.【結論】HFD群ではPHx後の再生遅延を認め,再生過程で肝内に蓄積してくる脂質によって誘発されるERストレスが,細胞内シグナルの伝達障害やDNA合成遅延の一因となる可能性が示唆された.
索引用語