セッション情報 口演

肝 基礎3

タイトル O-215:

肝細胞特異的TGFβ activated kinase 1欠損マウスにおける絶食による肝脂肪化とオートファジー誘導障害

演者 井口 清香(北里研究所病院消化器内科)
共同演者 Brenner David(カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部), 石 亦宏(カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部)
抄録 【目的】TGFβ activated kinase 1(Tak1)は,TNF receptor 1,Toll-like receptor 4,Interleukin 1 receptorおよびTGFβ receptorを介したNFκBやJNKの活性化シグナルにおいて重要な役割を担う.我々は,Tak1を肝細胞特異的に欠損させたマウス(Tak1ΔHEP)の肝臓で,自然発生的に肝細胞壊死・炎症・線維化・発癌が生じることを報告してきた.今回は,絶食時のTak1ΔHEPに生じる現象を観察する.【方法】Tak1ΔHEPを作製し,4週齢マウスを用いて,12時間および24時間絶食させ,血液・肝臓を採取摘出して,生化学的・組織学的に評価した.肝組織のLC3B免疫染色を施行しオートファジーを評価した.また,mTOR阻害薬であるrapamycinを事前に投与して,同様の評価を行った.肝脂肪酸酸化を14C標識パルミチン酸投与のマウス肝で,肝トリグリセリド分泌率をpoloxymer 407投与のマウスで計測した.【成績】絶食によりTak1ΔHEP肝は肉眼的に白色を呈し,肝組織でOil Red O染色域の著しい拡大を認めた.肝トリグリセリド量はコントロールマウスの3倍だったが,血清遊離脂肪酸濃度は,両群で絶食により上昇し,有意差を認めなかった.肝トリグリセリド分泌率,肝脂肪酸酸化ともに,Tak1ΔHEPでコントロールマウスに比して有意に減少していた.また,Tak1ΔHEP肝では,絶食によるオートファジー誘導は欠如していたが,rapamycinによる誘導は認められた.Rapamycinを事前投与したTak1ΔHEPでは,絶食による肝脂肪化が抑制された.【結論】肝細胞のTak1シグナル欠損により,絶食によるmTOR活性抑制は障害され,肝脂肪酸酸化が障害されることで著しい肝脂肪化を呈し,オートファジー誘導も適切に生じなかった.
索引用語