セッション情報 口演

肝 基礎4

タイトル O-219:

肝細胞癌に対するAurora kinase B阻害剤とシスプラチン併用療法の効果

演者 竹崎 由佳(高知大学外科学講座外科1)
共同演者 北川 博之(高知大学外科学講座外科1), 宗景 匡哉(高知大学外科学講座外科1), 二村 雄介(高知大学外科学講座外科1), 白瀬 香子(高知大学外科学講座外科1), 大山 聡(高知大学外科学講座外科1), 金子 洋平(高知大学外科学講座外科1), 花崎 和弘(高知大学外科学講座外科1)
抄録 [目的と背景]肝細胞癌(HCC)は治癒切除後であってもその再発率は高く,再発例に対して肝再切除やラジオ波焼灼術等の局所療法が適切に行われなかった場合の予後は不良である.近年HCCにおけるAurora kinase B蛋白の過剰発現が癌の分裂異常を引き起こし,癌の形成および増殖の原因となることが明らかになった.またAurora kinase BはHCCに強く発現し,予後との関連も報告されており,我々の検討でもAurora kinase B mRNAレベルと術後の予後に正の相関がみられた.これまで我々はHCCに対する新規治療法の開発において,Aurora kinase B阻害剤であるAZD1152とシスプラチン(CDDP)の抗腫瘍効果についてMTT Assay法とWestern blot法を用いた検討を行ってきた.今回TUNEL染色とvivoレベルでの新たな検討を行ったので報告する.[結果]抗癌剤感受性の違う2系統のヒト由来HCC株で低濃度のAZD1152単独投与は癌細胞増殖を50%に抑制した.またAZD1152+CDDPの2剤併用投与ではAZD1152またはCDDP単独投与に比べて有意に癌細胞増殖抑制効果がみられた(91%,p<0.05).更にAZD1152またはCDDP単独投与に比べ,AZD1152+CDDP併用投与では,より強力なアポトーシス誘導作用も観察された.ヒト由来HCC細胞株(HepG2)を植皮したヌードマウスに2剤併用療法を行ったvivoレベルの検討において,明らかな腫瘍径の縮小がみられた.[結語と考察]臨床で使用されるCDDPの血中濃度より低濃度でもAZD1152を併用することによってHCCに対し,高い癌細胞死感受性が得られることが明らかとなった.また用量依存性に細胞毒性を有する従来の抗癌剤と異なり,AZD1152+CDDP併用療法はアポトーシス感受性を高め,殺細胞効果を増幅させることによって,HCC患者の予後向上に寄与する可能性が高いことが示唆された.
索引用語