セッション情報 口演

高齢者 他

タイトル O-241:

絶食を要する高齢者の消化器疾患の管理

演者 下田 浩輝(せんぽ東京高輪病院消化器内科)
共同演者 中野 利香(せんぽ東京高輪病院消化器内科)
抄録 【背景】高齢者の消化器疾患の治療においては生命予後を中心とした治療成績の改善が主目的であったが,最近では治療成績だけではなく患者のQOLも重要な問題となっている.消化器疾患は検査や治療に際して絶食を要することが多く,長期絶食がADLを低下させ在院日数の延長や施設への転院を余儀なくされることも少なくない.当院は病床数251の急性期病院であるが,患者の高齢化に伴い内科入院患者に占める75歳以上の割合は平均60%を超えている.そこで我々は高齢者のADL低下につながる要因を検討した.【方法】2011年9月から2012年8月までに当院消化器内科に緊急入院し絶食を必要とした75歳以上の患者〔消化管疾患(出血,腫瘍,感染症,イレウス等56例,肝疾患(肝硬変,肝癌等)20例,胆膵疾患(結石,炎症,腫瘍等)34例〕を対象とした.入院時の原因疾患,基礎疾患を踏まえ,絶食期間,在院日数,治療終了から退院までの日数,退院時のPS等を評価し高齢者特有の病態,および高齢者のQOLを考えた治療のあり方を考察した.【結果】絶食期間別の平均在院日数/治療終了から退院までの日数は絶食7日以内が18.6/3.2日,8~14日が30.6/10.9日,15~20日が19/17.6日,21日以上が82/64.5日と絶食期間が長いほど日数を要した.また症状発現から来院までの平均日数は非高齢者は3.2日であるのに対して高齢者は5.2日であり,受診が遅れるほど絶食期間が長くなる傾向がみられた.PS低下例は36例であり,PS0-1でも絶食期間が10日をこえると80%の症例でPSの低下がみられた.原因疾患別の絶食期間はそれぞれ平均5~6日で絶食期間との直接的な関係はなく,基礎疾患も同様に絶食期間を左右する因子ではなかった.【結論】高齢者は自覚症状に乏しいことも多く,症状出現から来院までに時間を要することも多い.その結果病状が重症化し,長期の絶食が必要となり在院期間の延長やADLの低下を招く可能性が示唆された.我々は日常診療において高齢者のささいな症状を見逃さないよう留意し,高齢者が入院治療を要する際には絶食期間の短縮を図ることが重要と考えられた.
索引用語