抄録 |
【目的】近年,腸内細菌と肥満との関連が注目され,肥満者の腸内細菌叢は食物の消化過程で高カロリーが生じると推定されている(Backhed F, Proc Natl Acad Sci USA 2004. Ley RE, Proc Natl Acad Sci USA 2005. Ley RE, Nature 2006. Turnbaugh PJ, Nature 2006.).また,Bacteroides/Firmicutes比が肥満と反比例することが指摘されている.【方法】二重盲検プラセボコントロール試験,transglucosidase effects on type 2 diabetes(TED)study(Sasaki M, Diabetes, Obesity and Metabolism 2012)で,試験開始前後で血液ならびに糞便が採取された63名を対象に,血糖コントロールならびに体重変化とterminal-restriction fragment length polymorphism(T-RFLP)解析による腸内細菌との関連につき検討した.【結果】試験期間は12週間で,プラセボ群が19名,transglucosidase(TGD)300 mg/dayが22名,TGD 900mg/dayが22名であった.試験開始前の3群間にHbA1c,体重,腸内細菌叢の違いはなかった.12週後,プラセボ群においてはHbA1cならびに体重の有意な増加がみられたが,腸内細菌叢には変化を認めなかった.一方,TGD群においてはHbA1cならびに体重に有意な変動をみとめず,HbA1cはプラセボ群に比べ有意にコントロールされていた.また,腸内細菌叢では肥満Bacteroides/Firmicutes比が有意に増加した.【結論】トランスグルコシダーゼは腸内細菌叢の改善により腸管内でのエネルギー産生を抑え,血糖ならびに体重を制御すると考えられた. |