抄録 |
【目的】高齢者の潰瘍性大腸炎(UC)の臨床的特徴を明らかにする.【対象・方法】1986年~2012年までに当院で加療した65歳以上のUC 139例を対象に,背景因子や治療内容,副作用などについて検討した.【成績】1)発病年齢は54.8±11.5歳(30~81歳),65歳以上での発病は28例(20%)であった.平均罹病期間は22.7±3.5年,当院での経過観察期間は15.3±3.2年であった.2)臨床経過は再燃寛解型118例(85%),初回発作型13例(9%),慢性持続型8例(6%)で,診断時の病変範囲は,全大腸炎型52例(37%),左側大腸炎型50例(36%),直腸炎型29例(21%),その他8例(6%)であった.発病時の臨床的重症度は,軽症91例(65%),中等症36例(26%),重症12例(9%)であった.併存疾患は75例(54%)に認め,高血圧症が最も多く(38例),その他では高脂血症や骨粗鬆症,脳血管疾患,糖尿病などが多くみられた.3)65歳以上での入院は23例(35回)で,治療はステロイド薬18例,血球成分吸着除去療法8例,TacrolimusとInfliximabが各1例であった.外科手術は12例(52%)に行い,手術理由はステロイド抵抗性8例,ステロイド依存性3例と大腸癌1例であった.4)経過中に大腸癌3例,high grade dysplasiaを4例に認め,病変確認までの罹病期間は16.4±7.9年であった.外科手術を2例,内視鏡的摘除を5例に行った.5)65歳以上で行った薬物療法の副作用を15例(11%)に認め,ステロイドではサイトメガロ腸炎,MRSA腸炎,帯状疱疹,蜂窩織炎などの感染症や糖尿病の増悪,白内障を認めた.またTacrolimusで腎障害もみられた.【結論】高齢者UCでは併存疾患を有する患者が多く,入院治療例での外科手術率が高かった.また薬物療法の副作用の発現頻度も高く,とくに感染症には注意が必要である. |