セッション情報 口演

大腸 高齢者2

タイトル O-269:

高齢者大腸癌の臨床病理学的特徴―外科の立場から―

演者 松田 圭二(帝京大学外科)
共同演者 福島 慶久(帝京大学外科), 赤羽根 拓弥(帝京大学外科), 島田 竜(帝京大学外科), 堀内 敦(帝京大学外科), 中村 圭介(帝京大学外科), 端山 軍(帝京大学外科), 山田 英樹(帝京大学外科), 野澤 慶次郎(帝京大学外科), 石原 聡一郎(帝京大学外科), 橋口 陽二郎(帝京大学外科)
抄録 【目的】高齢大腸癌患者の手術や抗癌剤治療を行う機会が増えている.本研究では高齢者大腸癌の臨床病理学的な特徴を検討し,今後の臨床に役立てることを目的とした.【方法】当科でこの12年間に治療が行われた75歳以上の大腸癌375病変を高齢者群,75歳未満の大腸癌1068病変を対照群として,各臨床病理学的項目に関して検討した.【結果】75歳以上の高齢者群は全体の26%を占めた.平均年齢は,対照群で61.8±6.4歳,高齢者群で79.7±4.0歳であった.高齢者群で有意に女性の割合が高かった(P=0003).また高齢者群で有意に右側大腸癌の割合が高かった(P<0.0001).併存症を有している率は対照群60%,高齢者群86%と高齢者群で有意に高かった(P<0.0001).既往手術のある割合は,対照群37%,高齢者群54%であった(P=0.003).重複癌の割合は,対照群14%,高齢者群31%であった(P<0.0001).根治度では有意差はみられなかったが,郭清度では,D3郭清が行われたのは対照群で59%,高齢者群で42%と対照群でより大きな郭清が行われていた(P<0.0001).手術時間は対照群が250±113分,高齢者群が220±93分と対照群で有意に長かった(P=0.003).出血量は有意差がみられなかった.術後合併症は対照群26%,高齢者群32%と高齢者群に高く,特にせん妄(0.6% vs. 6.1%,P<0.0001)と呼吸器系(1.1% vs. 3.2%,P=0.0005)は有意に高齢者群で高かった.術後在院日数は高齢者群で有意に長かった(24±21日vs. 26±19日,P=0.04).Stage別の五年生存率は,高齢者群で有意に低かったのはStage 2と4であった.死因の割合は,他病死が対照群で13%,高齢者群で27%であり,高齢者群では他病死の割合が有意に高かった(P=0.025).【結論】高齢者大腸癌患者の場合,術前に併存症や重複癌の評価を行い,治療方針を慎重に決定する.可能ならば根治度を落とさない手術を行い,術後はせん妄や肺炎などの合併症に十分な注意を払う必要がある.
索引用語