セッション情報 口演

胃・十二指腸 高齢者

タイトル O-272:

高齢者における低用量アスピリンによる胃粘膜障害の検討

演者 須藤 弘之(福井大学消化器内科学)
共同演者 尾崎 嘉彦(福井大学消化器内科学), 高橋 和人(福井大学消化器内科学), 大野 崇(福井大学消化器内科学), 松田 秀岳(福井大学消化器内科学), 大谷 昌弘(福井大学消化器内科学), 根本 朋幸(福井大学消化器内科学), 中本 安成(福井大学消化器内科学)
抄録 【目的】低用量アスピリン(LDA)は,近年特に高齢者で使用頻度が増加し,その消化管粘膜障害について種々報告されている.今回われわれは高齢者におけるLDAによる胃粘膜障害の危険因子,抑制因子を検討するとともに,胃粘膜障害と酸分泌抑制剤との関連について検討した.【方法】当院で抗血小板療法目的にLDAを継続して内服し,かつ2009年7月より2012年1月までに上部消化管内視鏡検査を受けた201例を対象とし,患者背景,併用薬,内視鏡所見を調査した.対象は,非高齢者(64歳以下),前期高齢者(65歳以上74歳以下),後期高齢者(75歳以上)の3群に分類した.酸分泌抑制剤はプロトンポンプ阻害薬(PPI)群,H2受容体拮抗薬(H2RA)群,非投与群に分類し,胃粘膜萎縮はclosed typeを軽度萎縮群,open typeを高度萎縮群とした.胃粘膜障害の程度はmodified LANZA scoreを用い,scoreが4以上を胃粘膜障害ありとした.年齢,性,抗凝固薬,抗血小板薬,NSAIDsの併用の有無,酸分泌抑制剤の種類,胃粘膜萎縮の程度,H. pyloriの有無,潰瘍瘢痕の有無などを独立変数として,胃粘膜障害に及ぼす影響についてロジスティック回帰分析を用い評価し,オッズ比(95%信頼区間)を算出した.また酸分泌抑制剤の種類別にLANZA scoreを比較検討するとともに胃潰瘍の頻度を比較検討した.【成績】オッズ比の検討では,胃粘膜障害の危険因子は,前期高齢者が12.8,後期高齢者が14.6,軽度萎縮が3.2,抗凝固薬の併用が5.4で,有意な因子である一方,PPIの併用は0.01で有意な抑制因子であった.高齢者のPPI群のLANZA scoreは,H2RA群,非投与群に比し有意に低値であった.胃潰瘍の頻度は後期高齢者群に比較的多かったが,PPI併用症例では認めなかった.【結論】LDAによる胃粘膜障害は,高齢者,軽度萎縮群,抗凝固薬併用群に多く,PPIの併用は胃粘膜障害の予防に有用と考えられた.特に高齢者ではPPIの併用は胃粘膜障害の抑制に有効であることが示された.
索引用語