セッション情報 口演

胃・十二指腸 高齢者

タイトル O-273:

高齢者における胃十二指腸潰瘍穿孔例の検討

演者 米山 文彦(名古屋掖済会病院外科)
共同演者 木村 充志(名古屋掖済会病院外科), 芥川 篤史(名古屋掖済会病院外科), 水谷 文俊(名古屋掖済会病院外科), 朝本 はるる(名古屋掖済会病院外科), 細井 敬泰(名古屋掖済会病院外科), 山崎 公稔(名古屋掖済会病院外科), 水川 卓丈(名古屋掖済会病院外科), 添田 郁美(名古屋掖済会病院外科), 磯部 英男(名古屋掖済会病院外科), 河野 弘(名古屋掖済会病院外科)
抄録 【目的】日本消化器病学会の消化性潰瘍診療ガイドラインでは70歳以上の高齢者の消化性潰瘍穿孔例に対して保存的治療より手術的治療を推奨している.これらの患者の病態を明らかにするために当科の症例から背景因子,経過転帰等につき検討した.【対象】平成17年9月から平成24年7月までに当科で経験した70歳以上の高齢者の消化性潰瘍穿孔例は27人28例(1人は2回の穿孔)であり,年齢は70歳から96歳,平均80.3歳であった.同期間に70歳以上の胃癌穿孔が2例あったが今回の検討からは除外した.【結果】背景因子の検討では27人中26人の患者で何らかの併存疾患を有していた.併存疾患の内訳は重複を含め心臓高血圧疾患23人,神経精神疾患10人,疼痛性整形外科的疾患8人などで,NSAIDSの服用11人 ステロイドの服用4人,発症時に他疾病の治療のため病院入院中や施設入所中の患者が8人であった.ADLや意思疎通能力の低下のため発症時期の同定が難しい症例が多かったが,当院受診まで24時間以上経過していると考えられる症例は13例であった.穿孔部位は胃7例,十二指腸21例であり,症状所見の比較的軽度な2例および併存疾患による手術リスクが極めて高いと考えられた1例で保存的治療が選択され,他の症例は緊急手術の方針となった.術式は1例で幽門側胃切除が行われたほかは穿孔部の閉鎖・大網被覆または充填が行われた.手術症例25例中18例で術後何らかの合併症があり4例が術後死亡した.保存的治療の死亡例はなかった.死亡例の内訳は70歳台3例,90歳台1例で術後11日から29日の間に死亡していた.内視鏡検査は23例で施行され,ピロリは検索の行われた9例中2例で陽性であった.【結論】高齢者の胃十二指腸潰瘍穿孔例ではほとんどの患者が基礎疾患をベースに発症しており,生命予後不良なクリティカルな病態と考えられ,併存疾患のリスクを勘案したうえで早期に手術を行うのが適切であると考えられた.
索引用語