セッション情報 口演

胃・十二指腸 高齢者

タイトル O-275:

PPI内服中に発症した出血性消化性潰瘍患者の検討

演者 中村 由紀(日本大学医学部消化器肝臓内科)
共同演者 水野 滋章(日本大学医学部消化器肝臓内科), 関 元博(日本大学医学部消化器肝臓内科), 大山 恭平(日本大学医学部消化器肝臓内科), 春田 明子(日本大学医学部消化器肝臓内科), 川島 志布子(日本大学医学部消化器肝臓内科), 塩沢 雄史(日本大学医学部消化器肝臓内科), 堀内 裕太(日本大学医学部消化器肝臓内科), 上原 俊樹(日本大学医学部消化器肝臓内科), 好士 大介(日本大学医学部消化器肝臓内科), 佐藤 秀樹(日本大学医学部消化器肝臓内科), 原澤 尚登(日本大学医学部消化器肝臓内科), 松村 寛(日本大学医学部消化器肝臓内科), 宇野 昭毅(日本大学医学部消化器肝臓内科), 徳弘 直紀(日本大学医学部消化器肝臓内科), 森山 光彦(日本大学医学部消化器肝臓内科)
抄録 【目的】高齢化に伴い基礎疾患を有する患者が増加し,出血性消化性潰瘍の背景因子が変化してきている.PPIは抗血栓薬やNSAIDsによる上部消化管出血,消化性潰瘍の一次,二次予防に有効であるが,それらを完全に抑制できるわけではない.今回,当院におけるPPI内服中に発症した出血性消化性潰瘍を検討した.【方法】当院において2007年~2010年に上部消化管出血のため緊急内視鏡を施行し,出血性消化性潰瘍と診断した452症例のうち,PPI内服中をP群,抗潰瘍薬非内服群をC群とし,臨床的特徴を比較検討した.H2RA,防御因子製剤のみ内服,内容不明な症例は除外した.【結果】P群40例(男30,女10),C群305例(男225,女80).平均年齢はP群67.1歳,C群61.6歳.合併疾患はP群で虚血性心疾患12.5%,悪性新生物32.5%,血液透析中7.5%に対し,C群では7.5%,12.5%,1.6%であった.潰瘍の既往は,P群で35%,C群で14.8%であった.原因となり得る薬剤の内服は,A)抗血小板薬,B)抗凝固薬,C)NSAIDs,D)いずれか2種類以上,E)内服なしとし,P群でA)25.0%,B)0%,C)25.0%,D)12.5%,E)37.5%,C群ではA)11.5%,B)2.0%,C)12.1%,D)6.2%,E)69.5%であった.Hピロリ陽性率は,P群53.8%,C群76.1%.2回以上の内視鏡的止血術(薬剤散布以外)を要した症例は,P群で7.5%,C群で12.5%.内視鏡的処置困難で手術またはIVRを施行した6例,穿孔・穿通を合併した6例は全てC群の症例であった.【結論】P群はC群に比し,悪性新生物の合併や血液透析中の割合が高い,潰瘍の既往が高率,NSAIDsや抗血小板薬の服用者が多い,などの特徴がある.一方,複数回の止血処置を要する率が低く,内視鏡的止血困難例および穿孔・穿通の合併は認めなかった.上記のような出血性潰瘍の高危険群に対して,PPIは潰瘍発生を完全には抑制できないが,発症しても重篤化を抑制している可能性が示唆された.
索引用語