セッション情報 口演

胃・十二指腸 高齢者

タイトル O-276:

90歳以上の患者に対する消化器内視鏡診療の検討

演者 大森 信弥(仙台赤十字病院消化器内科)
共同演者 川村 雄剛(仙台赤十字病院消化器内科), 佐藤 俊裕(仙台赤十字病院消化器内科), 菅野 厚(仙台赤十字病院消化器内科)
抄録 【背景】高齢化社会において,90歳以上の患者を診察することも日常診療上,散見されている.高齢になるほど,その内視鏡診療においては,脳血管/心血管疾患対策としての抗凝固薬・抗血小板(ACAP)薬の服用頻度の高さや,自身の自覚症状を的確に表現することの困難さなどに起因する,諸々の問題点が生じてくる.【目的】当院における90歳以上の患者に対する消化器内視鏡診療の現状を評価し,その安全性・妥当性について検討すること.【方法】1)2007年7月から2011年12月までの期間に消化器内視鏡が施行された90歳以上の患者178例について,その臨床像を検討した.内訳は,上部消化管内視鏡(EGD)109例(A群),下部消化管内視鏡(CS)49例(B群),胆膵内視鏡(ERCP)20例(C群)であった.2)上述の期間内に施行された治療内視鏡施行症例を,90歳以上の群(D群,35例)と90歳未満の群(E群,2023例)の2群に分類し,同2群間での臨床像(治療内容や合併症など)を比較検討した.【結果】1)最高年齢は98歳(平均年齢92.03+/- 2.02歳),全体の約97.8%の症例で何らかの基礎疾患を有しており,約11.8%が認知症患者,約32%がACAP薬服用者であった.C群では,A群およびB群よりも有意に治療内視鏡症例が多かった(P<0.05).全178例中,検査時に不穏状態となり,検査を途中で中止とした症例を5例(約2.8%),ERCP後膵炎の症例を1例(5%)認めたが,内視鏡後の出血・穿孔の症例は認めなかった.2)D群,E群の両群間において,内視鏡時の不穏による中断の頻度に有意差を認めなかった(P>0.05).D群では内視鏡後出血,穿孔およびERCP後膵炎発症例を認めず,EMR/ESDによる穿孔例はE群の1例のみであった.【総括】当院における90歳以上の患者に対する内視鏡診療は,超高齢者独特の特殊性に配慮しつつ,患者側の要望と医療的見地からみた治療適応を十分に吟味した上で,安全に施行し得ていると思われた.さらに症例を蓄積し,より安全かつ確実な内視鏡診療を模索することが今後の課題と考えられた.
索引用語