抄録 |
(背景・目的)我々は以前からFD患者の一部,特にPDS患者において胃排出能が障害されていることを報告してきた(Shindo T, et al Digestion).こうした消化管運動能は,脳内peptideや粘膜局所のmicro-inflmmationなど,様々な因子によっても影響を受けている.そこで今回我々は,LPS投与したラットに対してurocortin1を脳槽内投与した上で,胃排出能と小腸通過時間を比較検討し,興味深い結果を得たので,報告する.(方法)SDラットを用いて,LPS(600μg)を腹腔内投与し,脳固定装置下に脳槽内にカテを留置し,urocortin 1を3.3μg/kgで脳槽内投与した.その後,1週間観察後,マーカー法で,胃排出能および小腸通過時間を測定した.Sham ope群(n=3),LPS投与群(n=4),LPS+urocortin 1投与群(n=4),urocortin 1単独投与群(n=3)の3群に分けた.胃,小腸,大腸の炎症細胞の程度はH&E染色を用いて評価した.(結果)LPS投与群の胃排出能はsham ope群に比較して有意に障害されていた.一方でLPS+urocortin 1投与群においてはLPS投与群より障害されていた胃排出能はさらに有意に障害された.urocortin 1単独投与群においては,LPS+urocortin 1投与群とほぼ同程度であった.小腸通過時間に関しては,LPS投与により有意に小腸通過時間は障害され,LPS+urocortin 1投与群ではLPS投与群より有意に改善されていた.Urocortin 1はLPS投与群粘膜局所の炎症細胞浸潤に関しては,S-colon,A-colonにおける好酸球浸潤はLPS投与によって増加し,LPS+urocortin 1投与群においては有意に改善していた.胃体部においては,そのような相関関係は得られなかった.(結語)消化管局所の炎症は消化管運動に影響を及ぼすが,脳内peptideの消化管運動に与える影響は臓器間で異なっている可能性が示唆された. |