セッション情報 口演

胃癌 基礎2

タイトル O-285:

ガストリントランスジェニックマウスを用いた茶カテキンによる胃発癌予防効果の検討

演者 大野 崇(福井大学消化器内科)
共同演者 大谷 昌弘(福井大学消化器内科), 松田 秀岳(福井大学消化器内科), 根本 朋幸(福井大学消化器内科), 須藤 弘之(福井大学消化器内科), 中本 安成(福井大学消化器内科)
抄録 【目的】茶カテキンはフラボノイドの一種であり,抗菌,抗酸化,抗腫瘍,肥満抑制といった様々な生理活性作用が認められている.疫学的検討では緑茶高消費量群において胃癌発症のリスクが低下するという報告もあるが,未だ一定の見解は得られてはいない.In vitroにおける検討では茶カテキンは様々な細胞においてIFN-γなどの炎症性サイトカインの発現抑制効果や細胞増殖抑制作用が認められており,またラットを用いたMNNG誘導化学胃発癌モデルにおいても抗腫瘍効果が報告されている.今回,我々は自然経過で胃炎と胃癌を発症するガストリントランスジェニック(INS-GAS)マウスを用いて,茶カテキン長期投与による胃炎と発癌に対する予防効果に関して免疫病理学的検討を行った.【方法】雄INS-GASマウスに対して生後9週より緑茶抽出物を2000ppm.の濃度で飲用水に溶解して継続投与した.投与開始後4週と28週に解剖を行い,半定量的scaleを用いた病理組織学的検討(inflamation,dysplasia)と炎症性サイトカイン(IFN-γ,TNF-α,IL-1β)のmRNA発現量をreal-time PCR法にて評価した.また,Ki-67免疫染色を行い,胃粘膜上皮における細胞増殖能について検討した.【成績】カテキン投与群の体重は非投与群と比較して4週後および28週後に有意に低下していた(p<0.01).病理組織学的検討ではinflamatory scoreは有意差を認めなかったが,dysplasia scoreがカテキン投与群において有意に低値であった(28週:カテキン群平均2.44 vs.非投与群平均1.69;p=0.0255).また,IFN-γのmRNAレベルは4週後の時点で有意に低下しており(p<0.01),28週においても低下傾向を認めた(p=0.052).TNF-α,IL-1βに関しては差を認めなかった.Ki-67免疫染色ではカテキンの投与群において陽性細胞数が低い傾向が認められた.【結論】INS-GASマウスにおいて,茶カテキンはINF-γ発現の低下や細胞増殖能の抑制により,胃発癌に対して予防的に作用する可能性が考えられた.
索引用語