セッション情報 口演

胃癌 基礎2

タイトル O-287:

ベトナム人(東南アジア),バングラデシュ人(南アジア)における胃粘膜の比較観察

演者 松久 威史(日本医科大学多摩永山病院消化器科)
共同演者 山田 宣孝(日本医科大学病理学教室), Le Kim Sang(チュンブン救急病院消化器科), Hafeza Aftab(ダッカ医科大学消化器肝臓内科)
抄録 【目的】ベトナム人(東南アジア),バングラデシュ人(南アジア人)は日本人に比し慢性炎症,好中球活動度,腺萎縮,腸上皮化生スコアが有意に低いことを報告した.人口10万対胃癌罹患率はバングラデシュ(5.2),ベトナム(18.9)で,日本は31.1である(GLOBOCAN 2008).今回は,ベトナム人(ホーチミン),バングラデシュ人(ダッカ)のHelicobacter pyloriHp)感染率,Hp陽性例における背景胃粘膜を比較観察した.【対象と方法】内視鏡検査時に3点生検を行ったベトナム人511例,バングラデシュ人418例を対象とした(計929例).3点生検切片(#1:前庭部下部大彎側,#2:胃体上部大彎側,#3:胃体下部小彎側)の病理診断は,Updated Sydney systemに従い,一人の病理医が行った.Hp感染率の比較には,年齢,性別,内視鏡診断をマッチさせた314組,628例,Hp陽性例における背景胃粘膜の比較には155組,310例を使用した.【成績】Hp感染率はベトナム人に比しバングラデシュ人において有意に高かった(各々43.9%,59.9%,p<0.0002).Hp陽性ベトナム人の慢性炎症,好中球活動度スコアは全ての部位においてHp陽性バングラデシュ人よりも有意に高かった.また,Hp陽性例における好中球活動度スコアを用いた前庭部胃炎(#1:A)に対する胃体部胃炎(#3:C)の比(C/A比)は,両国とも全ての年齢層において1より小かった(前庭部優勢胃炎).Hp陽性例の腺萎縮スコア(#1,#3),腸上皮化生スコア(#1)もバングラデシュ人に比しベトナム人で高値を示した.【結語】Hp陽性バングラデシュ人に比しベトナム人の慢性炎症,好中球活動度,腺萎縮,腸上皮化生スコアは高かった.これが東南アジア人に比べ南アジア人に胃癌の少ない一因と思われた.
索引用語