セッション情報 口演

バレット食道

タイトル O-291:

高齢逆流性食道炎患者の食道運動機能の解析―逆流と食道運動機能低下の因果関係―

演者 川見 典之(日本医科大学消化器内科学)
共同演者 岩切 勝彦(日本医科大学千葉北総病院消化器内科), 梅澤 まり子(日本医科大学消化器内科学), 佐野 弘仁(日本医科大学消化器内科学), 田中 由理子(日本医科大学消化器内科学), 星野 慎太郎(日本医科大学千葉北総病院消化器内科), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 【目的】これまで加齢による食道運動機能低下が逆流性食道炎発症の一因と考えられていたが,胃酸逆流の結果として食道運動機能低下をきたした可能性も考えられる.我々の以前の検討では,若年健常者に比べ高齢健常者では二次蠕動波出現率は低下しているものの一次蠕動波に違いはなかった.今回高齢逆流性食道炎(RE)患者を加えて逆流と食道運動機能低下の因果関係について検討する.【方法】対象は胸やけや嚥下障害などを認めない65歳以上の高齢健常者40例(平均年齢74.2±5.4歳)と若年健常者40例(平均年齢35.5±7.1歳),また65歳以上のgrade AorBの高齢RE患者19例(平均年齢70.1±5.4歳)である.食道内圧検査は21チャンネルのinfused catheter法にて行った.LES圧は測定開始後5-10分の平均とした.食道一次蠕動波出現率は20mmHgの等圧線の欠損部位が5cm未満でCFVが9cm/sec未満の場合を蠕動波ありとし,蠕動の強さは平滑筋領域の0mmHg以上のdistal contractile integral(DCI)で評価した.また食道中部に20mlの空気を注入し出現する二次蠕動波の出現率,蠕動の強さは一次蠕動波同様DCIで評価した.【成績】若年健常者と高齢健常者のLES圧,一次蠕動波出現率,一次蠕動波DCIに差はみられなかった.高齢健常者の二次蠕動波出現率(45.5±5.3%)は,若年健常者(76.5±4.1%)に比べ有意に低下していた(P<0.0001).高齢健常者と高齢RE患者を比べると,LES圧,一次蠕動波出現率に差はないが,高齢RE患者の一次蠕動波DCI(803.5±115mmHg・cm・sec)は,高齢健常者のDCI(1205.4±126 mmHg・cm・sec)に比べ有意に低下していた(P=0.0285).高齢健常者,RE患者間の二次蠕動波の出現率に差は認めなかったが,高齢RE患者のDCIは低下傾向にあった.【結論】高齢者における一次蠕動波DCIの低下は,逆流自体による影響が考えられたが,二次蠕動波出現率の低下は加齢による影響と思われた.
索引用語