セッション情報 口演

大腸 他1

タイトル O-300:

大腸ESDにおける穿孔例の検討

演者 原田 馨太(岡山大学病院光学医療診療部)
共同演者 平岡 佐規子(岡山大学病院消化器内科), 岡田 裕之(岡山大学病院光学医療診療部), 井口 俊博(岡山大学病院消化器内科), 半井 明日香(岡山大学病院消化器内科), 平川 智子(岡山大学病院消化器内科), 秋田 光洋(岡山大学病院消化器内科), 喜多 雅英(岡山大学病院消化器内科), 松原 稔(岡山大学病院消化器内科), 川野 誠司(岡山大学病院光学医療診療部), 那須 淳一郎(岡山大学病院消化器内科), 河原 祥朗(岡山大学病院光学医療診療部), 山本 和秀(岡山大学病院消化器内科)
抄録 【背景】大腸ESDは,かつては困難であった大型病変や再発病変の一括切除を可能にした.しかし既に標準化されているEMRと比較すると,高度な技術を要し,偶発症発生の可能性が高いという問題点もある.中でも穿孔は,便中流出により致命的な腹膜炎を誘発するリスクがあり,発生に関連する因子や予後に習熟しておくことは重要である.【対象と方法】2008年4月~2012年8月に岡山大学病院で大腸ESDを行った168例のうち,術中穿孔を起こした15例について検討した.【結果】穿孔15例の背景は,年齢中央値68歳(25-84),女性7例(47%).腫瘍平均径42.7mm(非穿孔群42.0mm),局在は非固定腸管(横行とS-Rs)が10例(67%)を占めた.病理は癌が5例(33%)で,うち2例がsm以深であった.15例中2例は肉眼的に10mmを越える大型の穿孔であった.非穿孔群との比較で,穿孔に有意に関連した因子は,lifting不良(オッズ比5.9)と,術者のESD経験数(オッズ比7.9)であった.lifting不良による穿孔7例中1例はEMR後再発,4例は術前生検の影響が考えられた.大腸ESD経験100例以上の医師が施行した症例で穿孔したのは5例(穿孔率4%)で,他の10例は経験30例未満の医師が術者だった.15例全て,術中に穿孔部位をロングクリップで縫縮閉鎖した.14例は保存的治療のみで退院でき,平均在院日数は8.9日(非穿孔群6.4日)だった.1例は炎症反応遷延と画像所見の増悪によりESD後第5病日に緊急開腹手術へ移行した.【まとめ】大腸ESDは手技的難度の高い症例を扱うことが稀でなく,偶発症回避のために初心者は経験ある指導医の下で行うべきと考えられた.またlifting不良例は穿孔リスクが高く,習慣的で治療方針決定に寄与しない術前生検は慎むべきである.穿孔時にはクリップ縫縮が有効なケースが多いが,術後の臨床所見に改善傾向が見られない症例については手術の時期を逸しないよう厳重に経過観察すべきである.
索引用語