抄録 |
【目的】近年,食生活の欧米化や高齢化に伴い大腸憩室炎が増加している.大腸憩室の罹患率は40歳未満で6%,40歳代で12%,50歳代で16%と報告されており,年齢とともに増加傾向にある.今回,罹患率の低い40歳未満の若年者における大腸憩室炎の臨床的特徴を明らかにするために,40歳未満と40歳以上における臨床背景や治療経過を比較検討する.【方法】対象は2003年から2012年7月までに大腸憩室炎の診断にて入院加療を受けた83名(40歳未満35名,40歳以上48名).検討項目は性別,BMI,便秘薬内服の有無,発症部位,腹水の有無,WBC,CRP,発症から診断までの時間,入院期間,抗生剤投与期間,再発の有無,手術移行の有無について検討した.【成績】40歳未満(17-39歳)の男女比は18:17,BMI:21.7±18.2kg/m2,便秘薬の内服はなく,発症部位(右側結腸31名,横行結腸1名,左側結腸3名),腹水(あり12名,なし23名),WBC:11100±288/μl,CRP:4.6±4.2mg/dl,発症から診断までの時間:45.4±30.1時間,入院期間:7.5±3.2日,抗生剤投与期間:5.3±1.9日,再発は3名,手術移行例は認めなかった.40歳以上(40-81歳)の男女比は26:22,BMI:22.8±13.8kg/m2,便秘薬の内服(あり7名,なし41名),発症部位(右側結腸35名,横行結腸1名,左側結腸12名),腹水(あり3名,なし45名),WBC:11346±341/μl,CRP:6.4±4.7mg/dl,発症から診断までの時間:40.3±35.6時間,入院期間:9.6±3.8日,抗生剤投与期間:6.6±1.9日,再発は9名,手術移行例は1名認めた.単変量解析にて,若年者では右側結腸に発症しやすい傾向を認め(P=0.056),便秘薬の有無,腹水の有無,入院期間,抗生剤投与期間にて有意差(P<0.05)を認めた.【結論】若年者における大腸憩室炎の背景因子として,便秘薬は内服しておらず,右側結腸に多く発症する傾向にあった.入院時に腹水を伴う症例を多く認めたが,入院期間及びに抗生剤投与期間は短い傾向にあった. |