セッション情報 口演

大腸 基礎

タイトル O-311:

大腸癌におけるdefensinの機能に関する検討

演者 草川 聡子(三重大学大学院消化器内科学)
共同演者 杉本 和史(三重大学大学院消化器内科学), 井上 英和(三重大学大学院消化器内科学), 白木 克哉(三重大学大学院消化器内科学), 高瀬 幸次郎(三重大学大学院消化器内科学), 竹井 謙之(三重大学大学院消化器内科学)
抄録 【目的】生体は病原微生物に対する防御機構として種々の抵抗物質を産生しているが,その中でもdefensinは広く抗微生物活性を有する抗菌ペプチドの一つとして知られている.defensinは分子上の特性からα-defensinとβ-defensinに大別される.2001年にβ-defensin-3(hBD3)が報告され,種々の臓器で発現が確認されている.近年,このように抗菌ペプチドと疾患の関連性の研究は増加しているが,癌との関連についての報告はいまだ少ない.今回我々は,ヒト大腸癌細胞株(Colo320,SW620)を用いてDefensinとくにhBD3の大腸がんにおける機能を検討した.【方法】ヒト大腸癌細胞株(Colo320,SW620)における発現をreal-time PCRにより検討した.ヒト大腸癌組織,各種大腸癌tissue arrayを用いてhBD3の発現を免疫染色により検討した.hBD3添加による細胞増殖への影響をMTTアッセイにより検討した.次に,また,ヒト大腸がん細胞株でのNF-κBのシグナル伝達への影響をレポータージーンアッセイにより解析した.さらに,Oris Pro Cell Migration Assayキットを用いて,hBD3添加による細胞遊走能への影響の評価を経時的に行った.また,hBD3を添加後,Real time PCR Arrayで遺伝子発現の変化を解析した.【結果】RT-PCRによる検討では大腸癌細胞株(Colo320,SW620)にdefensin2,3いずれも発現は認められず,LPSによる刺激でも発言は認められなかった.また,免疫染色では癌部周辺組織での発現が認められた.Colo320はhBD3添加群で48時間培養後10-20%程度の増殖抑制を認めた.NF-κBシグナル伝達はhBD3添加群で低下していた.hBD3添加により濃度依存的に大腸癌細胞の遊走が抑制された.Real time PCR Arrayの結果hBD3添加により発現が変化する遺伝子としてインテグリン等が示唆された.【結語】hBD3は大腸癌周辺環境により産生され,大腸癌の発育,浸潤を抑制する可能性が示唆された
索引用語