セッション情報 口演

膵炎2

タイトル O-337:

膵石構造の研究から得られたもの:膵石での感染結石の存在と脂肪酸カルシウム石内の結晶構造について

演者 中村 隆司(東北厚生年金病院消化器外科)
共同演者 目黒 敬義(東北厚生年金病院消化器科), 山本 毅(東北厚生年金病院消化器科), 村上 一宏(東北厚生年金病院病理部), 田中 純一(田中外科医院), 児山 香(東北厚生年金病院消化器外科), 米地 真(東北厚生年金病院消化器科), 宇都宮 恭子(東北厚生年金病院消化器科), 鈴木 範明(東北厚生年金病院消化器科), 松村 吉史(東北厚生年金病院消化器科), 近藤 志帆(東北厚生年金病院消化器科), 支倉 さやか(東北厚生年金病院消化器科), 松野 正紀(東北厚生年金病院消化器外科)
抄録 【緒言】膵石の殆どは炭酸カルシウム石であり脂肪酸カルシウム石の報告は極めて少ない.また膵石での感染結石の報告も無い.炭酸カルシウム石の脱灰後標本の組織学的検討を続け,最近の症例で微生物を認めたものがあり報告する.さらに極めて稀な脂肪酸カルシウム石切片を偏光顕微鏡で観察し,結晶構造と思われる成分を同定したので報告する.【方法】膵石は慢性膵炎手術中に採取した炭酸カルシウム石9例で無菌的に摘出直後にホルマリンに浸漬,脱灰後包埋後に通常の染色,PAS,グラム,グロコット染色,免疫組織染色を行った.脂肪酸カルシウム石の1例では膵組織と共に処理し切片を作成後偏光顕微鏡で観察した.さらに各結石は摘出後乾燥,赤外吸光分析に供した.【結果】10例中8例に微生物は存在しなかったが71才男性の膵尾側の嚢胞合併切除例の膵石内に細菌が認められた.また16才男性の遺伝性慢性膵炎例の多量の膵石の一部に菌糸型,胞子型の真菌コロニーが認められた.以上の2例で膵管ステントは無かった.47才男性で,PETで高SUV値を示した疼痛高度な膵頭部腫瘤症例の切除後標本の空洞内に存在した黒色の柔らかい結石は,赤外吸光分析で脂肪酸カルシウムが主成分と判明した.この症例の病理組織検査ではgroove pancreatitisが考えられた.本症例の膵組織切片と共に作成した膵石切片を偏光顕微鏡で観察すると細い棒状の光学的異方体の結晶物質とこれらが集合して形成された可能性のある球晶が多数存在した.【結語と考察】膵石でも感染結石が存在した.今後ステントの普及とともに真菌を含む感染結石例が増加する可能性がある.脂肪酸カルシウム石の結晶構造と成因については更なる検討を要する.
索引用語