セッション情報 口演

胆道 診断

タイトル O-343:

肝内胆管癌発生からみた肝内結石症の取扱い―コホート調査の検討―

演者 鈴木 裕(杏林大学外科)
共同演者 森 俊幸(杏林大学外科), 中沼 安二(金沢大学形態機能病理学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 杉山 政則(杏林大学外科)
抄録 〔背景と目的〕肝内結石症の診療において,肝内胆管癌の合併は治療成績に大きく影響する.そのため,発癌の危険因子の抽出は治療方針決定のために極めて重要である.今回,全国調査に登録された肝内結石症例に対しコホート調査により肝内胆管癌発生の危険因子を解析した.〔対象と方法〕1998年に行われた全国調査登録例のうち,検討項目(性別,年齢(65歳≦,65歳>),臨床症状,結石種類,結石存在部位,結石存在葉,治療内容,退院時問題点,退院後経過中の問題点,結石再発,UDCA内服)すべてに回答され,5年以上の追跡が可能であった261例が対象.これらを,肝内胆管癌の合併例(23例,性別:男性10例,女性13例)と非合併例(238例,性別:男性100例,女性138例)の2群に分け検討.Kaplan-Meier法(Log Rank test)およびCox回帰分析により,肝内胆管癌合併の危険因子を抽出した.〔結果〕全症例を対象に解析すると,年齢(ハザード比3.029),切石のみ(ハザード比2.873)と発癌に有意に影響を与える因子として抽出.また,有意ではなかったが,UDCA内服がハザード比0.253と発癌の危険を下げる因子であった.同様の解析を層別に行うと,胆道手術既往例116例では,65歳以上(ハザード比8.033),経過中の胆道狭窄(ハザード比4.615)が発癌の危険因子として抽出.また,胆道既往手術のない症例145例では左葉例(ハザード比5.678),結石再発(ハザード比6.264)が抽出され,肝切除術はハザード比0.066と発癌の危険を下げる有意な因子として抽出.さらに,胆道手術の既往がなく,無症状,胆道狭窄がない症例36例に対しては,有意な因子は認めず.〔結論〕胆道手術既往例には切石のみでなく,狭窄の解除が重要.また,胆道手術既往がない症例,とくに左葉例に対しては肝切除が良い適応であると思われた.胆道手術既往なし・胆管狭窄なし・無症状例には経過観察が妥当.肝内結石の病態は多彩であり,各病態により適切な治療を選択すべきである.
索引用語