抄録 |
【目的】GERDの食道外症状は多彩であり,胸痛を始め慢性咳嗽,咽喉頭異常感症などが知られている.背部痛も関与が示唆されているが,十分な臨床的検討はされていない.今回器質疾患がある程度除外され,PPIを含む薬物療法だけでなく生活習慣改善を含めたGERD治療により改善した背部痛の症例について検討した.【方法】2005年1月から2006年12月末までに初診として受診した患者を対象とした.生活習慣等のアンケート調査に協力頂き主訴に背部痛関連症状を記載し,初診時に診察及び各種検査により器質疾患が否定され,GERD治療につきインフォームド・コンセントをとり同治療により症状改善を認めた症例を検討した.主訴記載欄に背部痛・違和感を記載した症例は7例あり,うち2例は背部症状を主訴として取り扱うのが不適切であった.残り5例は治療により改善したが,4例はGERD治療単独で,1例は筋性疼痛に対する治療を追加し完治した.GERD単独治療で治癒した4症例についてアンケート及び症状日誌よりGERD関連背部痛の臨床像に関して解析した.【結果】年齢は18~68歳,男性2例,女性2例,1例摂食障害のためパキシル内服中であった.背部痛3例,背部違和感が1例,2例で胸痛,咽喉頭症状及び咳嗽を認めた.症状は1日数回~終日あり受診までに背部痛に対する治療歴はなかった.症状の増悪寛解因子は1例で「生活習慣や姿勢による」,1例で「背中,胸などを叩くと楽になる」であった.3例は胸焼けを経験していたが,1例は胸焼けがわからなかった.食道症状の胸焼け,呑酸はいずれも全例1週間に1回以下であり,おくびだけ1例で1週間に数回の頻度で認められた.罹患期間は2日~7ヶ月と幅があり,7ヶ月の症例が完治までに70日を要したがすべて14日以内に治療により改善した.全例PPI常用量または倍量と,眠前に水酸化アルミニウムゲル剤が投薬され生活習慣改善を指導されていた.【結論】初診である程度の器質的疾患が除外できれば積極的に疑う所見がなくてもGERDに対する診断的治療は2週間で改善が認められるため積極的に行うべきであると考えられた. |