セッション情報 ポスター

大腸 基礎

タイトル P-027:

マイクロサテライト不安定性標的遺伝子MBD4の変異から見た5FUの感受性変化

演者 岩泉 守哉(浜松医科大学分子診断学)
共同演者 栗山 茂(浜松医科大学救急部), 杉本 健(浜松医科大学第一内科), 金岡 繁(浜松医科大学分子診断学)
抄録 【目的】DNAミスマッチ修復(MMR)の異常によりマイクロサテライト不安定性(MSI)を呈する大腸癌は臨床的に5FUの効果に乏しいことが知られている.DNA中の5FUを認識し薬剤感受性変化に影響を与える塩基除去修復(BER)分子MBD4はMSIの標的(A10>A9 in Exon3)であり,かつMMR蛋白のひとつであるhMLH1とも結合することで知られるユニークな分子であるが,MSIの標的となった結果認められる変異型MBD4陽性大腸癌における5FUの感受性についての検討はない.今回我々は,変異型MBD4陽性大腸癌の5FUに対する感受性変化について検討した.【方法】大腸癌細胞株HT29(MMR正常,MBD4A10/A10),HCT116(hMLH1-/-,MBD4A10/A9)およびHCA7(hMLH1-/-,MBD4A9/A9)から抽出された核蛋白をそれぞれビオチン標識化5FU挿入dsDNA(60bp)および非ビオチン標識化5FU挿入dsDNAと混和後,Streptavidin Magnetic Beadsを用いてDNA Pull Down Assayを行い,DNA中の5FUに対する野生型および変異型MBD4の認識力を評価した.また,HT29に野生型および変異型MBD4発現プラスミドを導入し樹立した安定形質株に5FUを投与し,MTS AssayおよびClonogenic Assayを用いて感受性を評価した.【結果】(1)野生型MBD4,変異型MBD4共にDNA中の5FUを認識したが,変異型MBD4において有意に認識力が強かった.(2)変異型MBD4発現細胞株から抽出された核蛋白では野生型MBD4発現細胞株から抽出された核蛋白に比べ有意差を持ってMMR蛋白のDNA中5FUへの結合が抑えられていた.(3)変異型MBD4発現細胞株では野生型MBD4発現細胞株に比べ有意に5FUに対する細胞障害性が強かった.【結論】変異型MBD4は,野生型MBD4およびMMR蛋白に比べ,DNA中の5FUに対する結合力が強く,5FUの感受性を増強させた.大腸癌化学療法のKey Drugである5FUの感受性に影響を与えるMSI標的変異蛋白を5FU併用下の治療標的分子の候補として詳細に検討解析することは将来の個別化治療戦略の一つになる可能性がある.
索引用語