セッション情報 ポスター

大腸 基礎

タイトル P-030:

慢性腸炎における腸管障害や線維化に対する乳酸菌由来長鎖ポリリン酸の有用性

演者 嘉島 伸(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野)
共同演者 藤谷 幹浩(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 上野 伸展(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 井尻 学見(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 岡田 哲弘(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 坂谷 慧(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 田中 一之(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 堂腰 達矢(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 安藤 勝祥(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 富永 素矢(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 稲場 勇平(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 伊藤 貴博(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 田邊 裕貴(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野), 高後 裕(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学分野)
抄録 背景:クローン病や潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性腸疾患では,腸管障害が反復して起こることにより高率に腸管組織の線維化をきたし,腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす.線維化の形成・維持にはTGFβやCTGFの発現増加が関係しており,これらの分子の発現を制御することにより線維化の軽減が期待される.我々はこれまで,乳酸菌由来活性物質である長鎖ポリリン酸(poly P)が急性炎症モデルにおける腸管障害を改善することを明らかにしてきた.本研究では慢性腸炎モデルにおける腸管障害や線維化に対するpoly Pの改善効果を検討する.方法:3%DSS自由飲水を5日間,その後蒸留水自由飲水を30日間行い,慢性腸炎モデルマウスを作製した.poly PはDSS投与開始後25日目から注腸投与した.コントロール群,DSS単独投与群,DSSおよびpoly P投与群の3群において,腸管粘膜からサンプルを回収し,RT-PCR,ウエスタンブロットにより各遺伝子の発現を検討した.結果:(1)DSS単独投与群ではコントロール群に対し有意に腸管が短縮しており,poly P投与により腸管短縮は改善した.またpoly P投与群では粘膜下層~筋層にかけての浮腫,炎症細胞浸潤,線維化が軽度であった.(2)DSS単独投与群では炎症性のメディエーターであるであるIL-1β,TNFα,IFNγ,pNFκBが過剰に発現していたが,poly Pを投与することで発現が抑制された.(3)DSS単独投与群ではTGFβ1,SMAD4,CTGFの発現量が増加しており,poly P注腸投与によりこれらの発現量は有意に低下した.結論:poly Pは慢性腸炎モデルにおける腸管障害や線維化を改善した.その機序として炎症性サイトカインおよび線維化促進分子の発現抑制が関与していた.poly Pは慢性腸炎における腸管障害や線維化に対する新たな治療薬になりうると考えられた.
索引用語