セッション情報 ポスター

食道 他

タイトル P-035:

食道壁内血腫の三例

演者 村井 大毅(関西労災病院消化器内科)
共同演者 中村 剛之(関西労災病院消化器内科), 土居 哲(関西労災病院消化器内科), 吉水 祥一(関西労災病院消化器内科), 嶋吉 章紀(関西労災病院消化器内科), 阿部 佳奈子(関西労災病院消化器内科), 板倉 史晃(関西労災病院消化器内科), 小豆澤 秀人(関西労災病院消化器内科), 戸田 万生良(関西労災病院消化器内科), 糸瀬 一陽(関西労災病院消化器内科), 柄川 悟志(関西労災病院消化器内科), 牧野 仁(関西労災病院消化器内科), 望月 圭(関西労災病院消化器内科), 伊藤 善基(関西労災病院消化器内科), 萩原 秀紀(関西労災病院消化器内科), 林 紀夫(関西労災病院消化器内科)
抄録 食道壁内血腫は稀な疾患とされている.今回,我々は食道壁内血腫を三例経験したので報告する.【症例1】81歳男性.吐血による誤嚥とそれに伴う呼吸苦を主訴に当院に緊急搬送され緊急入院となった.気管内挿管の上,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道入口部から中部食道まで粘膜下に血腫を認め,一部より軽度の出血が持続していた.粘膜傷害は下部食道に及んでいたが,胃・十二指腸の観察範囲内に出血源は認めなかった.1週間後には血腫は消失し,2週間後には完全に治癒していた.【症例2】75歳女性.夕食後に前胸部違和感を認め,近医を受診した.貧血の進行と食道から胃の噴門部にかけて広範な血腫を認めたために当科に紹介され,緊急入院となった.入院時の上部消化管内視鏡検査では,食道入口部から噴門部まで粘膜下に血腫を認め,一部より軽度の出血が持続していた.2週間後には食道病変は治癒過程の潰瘍の状態であった.4週間後には食道の潰瘍は完全に治癒していたが,食道胃接合部の潰瘍治癒に伴う瘢痕狭窄を来し,内視鏡的バルーン拡張術を要した.【症例3】76歳男性.腰部脊柱管狭窄症の手術直後に胸痛と呼吸苦を訴え,上部消化管内視鏡検査にて切歯20cmから食道‐空腸吻合部まで粘膜下血腫を認めた.1週間後には血腫は改善傾向を示し,1か月後には完全に消失して潰瘍瘢痕となっていた.狭窄は来さなかった.【考察】食道壁内血腫は突然の胸痛・吐血という症状や内視鏡所見からは重篤な疾患を想像させるが,実際には特別な治療を要さない予後良好な疾患であり,その病態は興味深い.自然治癒する疾患であることから,発症頻度は報告されているよりも高い可能性がある.食道壁内血腫自体が稀な疾患とされているが,その中でも自験例の二例目は後遺症として瘢痕狭窄を来した.このような報告例は我が国ではほとんどなく,文献的考察も加えて報告する.
索引用語