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膵臓 他

タイトル P-040:

膵がん細胞に対する亜ヒ酸による抗腫瘍効果について

演者 山内 貴裕(岐阜県総合医療センター消化器内科)
共同演者 足立 政治(岐北厚生病院消化器内科), 安田 一朗(岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学), 河口 順二(岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学)
抄録 はじめに:現在進行膵がん患者にはゲムシタビンが標準治療薬として用いられるが,その結果は未だ満足できるものではない.一方,ヒ素化合物は古くから殺鼠剤,殺虫剤などに用いられていたが古くから医療への応用も試みられており,現在のところ三酸化ヒ素が前骨髄性白血病治療薬として臨床応用されている.今回,亜ヒ酸の膵がんに対する抗腫瘍効果について検討した.方法:膵がん細胞(AsPC1,BxPC3)において,血小板由来成長因子(PDGF)-BBによる細胞遊走能に対する亜ヒ酸の影響をcell migration assayで検討した.また亜ヒ酸による,細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導効果および細胞周期に与える影響についてウェスタンブロット法で検討した.さらにPDGF-BB添加によるp44/p42 MAPK,AKTのリン酸化などの細胞内情報伝達系に対する亜ヒ酸投与の影響について検討した.結果:AsPC1において,PDGF-BB刺激による細胞遊走能の亢進は亜ヒ酸(30 μM)の前投与により抑制されたが,BxPC3では認められなかった.またAsPC1では亜ヒ酸の前投与によりPARPの分解抑制,cyclinD1やリン酸化Rb蛋白量の低下を認めることから細胞周期抑制効果も有すると考えられたが,いずれもBxPC3では認められなかった.またAsPC1においてPDGF-BB刺激によるAKTのリン酸化亢進は亜ヒ酸にて抑制され,さらにLY294002(PI3-kinase阻害薬),Akt阻害薬,GSK-3β阻害薬のいずれにおいても細胞遊走能の有意な抑制が認められた.結語:AsPC1では亜ヒ酸による抗腫瘍効果はAktシグナル系を抑制することによって引き起こされると推測された.われわれの検索した範囲では,膵がんでヒ素化合物が有効である可能性を示唆した世界で初めての報告であり今後の展開が期待される.
索引用語