セッション情報 ポスター

膵臓 他

タイトル P-043:

慢性膵炎におけるCFTR遺伝子変異の解析

演者 有賀 啓之(東北大学消化器内科)
共同演者 粂 潔(東北大学消化器内科), 正宗 淳(東北大学消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学消化器内科)
抄録 【目的】CFTR(Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)は嚢胞性線維症(Cystic fibrosis)の原因遺伝子であり,1700種以上の遺伝子異常が報告されている.白人における発症率は1/2500と高く,ΔF508などのCFTR遺伝子異常が慢性膵炎の発症リスクを高めることが知られている.CFTR遺伝子異常は人種間で差があり,本邦では欧米で認める代表的な遺伝子異常は少なく,欧米で稀な遺伝子異常が報告されている.本邦や韓国ではp.Q1352Hやp.R1453Wなどの変異が膵炎患者において高頻度であったと報告されているが,いずれも小規模の検討である.当科で診断した膵炎患者を対象にCFTR遺伝子異常について解析した.【方法】インフォームドコンセントを得た慢性膵炎240例,急性膵炎195例及び健常人440例について解析を行った.成因は,慢性膵炎はアルコール性120例,特発性90例,遺伝性7家系,家族性23家系で,急性膵炎はアルコール性53例,特発性80例,胆石性33例,高脂血症5例,癒合不全8例,ERCP後9例,薬剤性3例,IPMN4例であった.CFTR遺伝子のp.Q1352H,p.R1453W,p.M470Vについて制限酵素を用いてPCR-RFLPで解析を行った.【結果】p.Q1352H:慢性膵炎の頻度は5.8%であり,急性膵炎では7.2%で健常人4.2%と有意差はなかった(慢性膵炎p=0.38,急性膵炎p=0.13).p.R1453W:慢性膵炎では5.8%,急性膵炎では3.1%で,健常者3.7%と有意差はなかった(慢性膵炎p=0.18,急性膵炎p=0.69).p.M470Vは慢性膵炎では43.9%,急性膵炎では49.6%で健常人45.0%と有意差はなかった(慢性膵炎p=0.86,急性膵炎p=0.44).p.Q1352H,p.R1453W,p.M470Vいずれも成因別で統計学的有意差は認められなかった.【結論】本検討では,p.Q1352H,p.R1453Wの膵炎患者における頻度はいずれも健常人と比較して統計学的有意差はなかった.既に報告のあるこれら遺伝子異常による膵炎発症リスクは高くないと考えられた.膵炎関連遺伝子とCFTR遺伝子との関連について,網羅的な解析による再評価が必要である.
索引用語