セッション情報 ポスター

肝 AIH

タイトル P-077:

薬剤性肝障害と考えられたが経過中に自己免疫性肝炎と診断された症例についての検討

演者 石川 昌利(医真会八尾総合病院消化器センター内科)
共同演者 松村 吉庸(医真会八尾総合病院消化器センター内科), 鶴薗 卓也(医真会八尾総合病院消化器センター内科), 多田 和弘(医真会八尾総合病院消化器センター内科), 下里 直隆(医真会八尾総合病院消化器センター内科), 金 賢一(医真会八尾総合病院消化器センター内科)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)の発症機序は薬物の暴露,ウイルス感染,環境因子などが誘因となり発症する事が示唆されている.薬剤服用後の肝障害では免疫異常を伴った薬物性肝障害とAIHとの鑑別が問題となる症例が散見される.今回,薬剤服用により誘発されたAIHと診断された症例を経験したので報告する【症例1】43歳,男性【主訴】倦怠感【現病歴】2009年6月に顔面のにきびの治療の為,近医にて内服加療(ミノサイクリン)が開始.その後倦怠感が出現した為に当院を受診.AST:779 IU/l,ALT:1384 IU/l,T-Bil:5.5 mg/dlと肝障害を認めた【経過】薬剤性肝障害を考え薬剤を中止するもT-Bil:8.9 mg/dlまで増悪.肝生検を施行し国際診断基準でAIH scoreは治療前で13点(疑診)であり免疫異常を伴った薬物性肝障害との鑑別が問題となるも病理所見及び臨床経過から抗生剤内服を契機に顕在化したAIHと考えPSL:60mg/日を開始.肝機能は改善し退院.DLSTは陽性【症例2】67歳,女性【主訴】倦怠感【現病歴】2010年12月に脂質異常症に対しスタチン製剤(pitavastatin;リバロ)を開始.3カ月後の採血でAST:79 IU/l,ALT:114 IU/lと肝障害を認め薬剤を中止.倦怠感で再受診した際,AST:999 IU/l,ALT:989 IU/l,T-Bil:2.8 mg/dlと肝障害の増悪を認めた【経過】肝生検を施行しAIH scoreは17点(確診)でありPSL:60mg/日を開始.経過良好であり第21病日に退院【結論】薬剤誘発性AIHの診断の際,薬剤内服歴があると診断スコアは減点となり,自己抗体陽性の肝障害ではi)自己免疫現象を伴った薬物性肝障害ii)薬物により誘発されたAIHとの鑑別が重要となる.臨床の現場ではステロイド治療が先行するなど病態を明確に区別する事は困難な場合が多く使用している薬剤,臨床経過と肝組織所見が有用となる.AIHを疑う肝炎の場合,薬剤服用歴を確認する事,スコアに固執することなく個々の症例の臨床的特徴を勘案して診断する事が重要である.
索引用語