抄録 |
栄養や膵胆汁分泌のようなluminal factorは,哺乳類における小腸の細胞増殖の維持において重要である.Systemicで循環的な因子もまた粘膜の形態や細胞増殖に影響を与える.Systemic factorとluminal factorが切除され短縮した腸管の再生適応に含まれるが,各々の相対的な重要性は不明である.Thiry-vella fistula(TVF)は,luminal factorの影響を受けないが,neurovascular supplyは温存されており,systemic factorのみの影響を受けるモデルである.そこで,機能腸管の長さの異なるThiry-vella fistulaを作製し,IGF-1(I),ボンベシン(B),生食(S)を投与し,空置小腸粘膜の増殖について検討した.(方法)Wistar系雄性ラットを用い,1.20%TVF:回腸より口側10cm,30cmのところで,小腸を切離し,その部分の小腸を空置し,残存小腸を吻合した.2.80%TVF:回盲弁より口側10cmおよびトライツ靭帯より10cmのところで,小腸を切離し,その部分の小腸を空置し,残存小腸を吻合した.3.Sham(n=6)を作成した.術後10日目より20%TVFでは,3群に分け,IGF-1(I),ボンベシン(B),生食(S)を7日間皮下注,80%TVF群,Sham群では,生食を投与し8日目に再開腹し,TVF群では20cm空置腸管,Sham群では,回盲弁より口側の回腸20cmを摘出し,湿重量,蛋白量,Alp,絨毛高,PCNAを測定した.(結果)80%TVF(S)はsham群に,いづれの項目においても近似した.20%TVF(I)は20%TVF(B),20%TVF(S)に比し,いづれの項目においても高値を呈したが,80%TVF(S),sham群に比し低値を呈した.(結語)80%TVF群では小腸大量切除にでるtrophic factor,特にがIGF-1より強力な作用を有し,空置腸管粘膜の萎縮を予防した.Intraluminal nutritionは,腸粘膜維持にとって必須ではなく,腸管栄養に伴って生じ,腸上皮細胞の増殖刺激となるようなmediatorによって腸粘膜は維持される可能性が示唆された.Mediatorとしては,IGF-1より強力な作用を有するGLP-2などが予想される. |