抄録 |
[目的]非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における肝線維化は重症度を決める重要な因子である.今回我々はNASHモデルであるfatty liver shionogi(FLS)-ob/obマウスを用いて現在一般治療薬として用いられているezetimibe(EZT)(高コレステロール血症),irbesartan(IRB)(アンジオテンシン受容体拮抗薬),aliskiren(ALK)(rennin阻害剤)のNASH肝線維化に対する治療効果を検討した.[方法]雄性FLS-ob/obマウスに対してEZT5mg/kg,IRB30mg/kg,ALK100mg/kgをそれぞれ12週,12週,16週投与し,肝を採取した.[成績]FLS-ob/obマウスは週齢とともに高脂血症,糖尿病,脂肪肝炎を発症し,2WでF2,48WでF3-4となる.組織学的な肝脂肪化面積は対照群に比べてEZT群,IRB群,ALK群で有意に減少したが,肝コレステロール量はEZT群のみで有意に減少した.Sirius red染色による肝線維化面積は対照群に比べてEZT群70.3%,IRB群30.0%,ALK群52.2%の有意な減少を認め,肝Hyp量でもEZT群47.6%,IRB群34.7%,ALK群22.0%の減少を認めた.肝線維化改善の機序を明らかにするために活性化肝星細胞,酸化ストレス,サイトカインを検討した.αSMA染色による肝星細胞の活性化,酸化ストレスの指標である8OHdG免疫染色,炎症細胞浸潤の指標であるF4/80染色によるクッパー細胞数は対照群に比べていずれもEZT群,IRB群,ALK群とも有意に減少した.また,サイトカインの肝遺伝子発現はEZT群とIRB群ではTGFβ-1,TNF-αがALK群ではTGFβ-1が有意に減少した.脂質代謝酵素の肝遺伝子発現ではEZT群とIRB群でSREBP1cが有意に減少したが,ALK群では変化を認めなかった.[結語]ヒトNASHにきわめて類似したFLS-ob/obマウスを用いてEZT,IRB,ALKの治療効果を検討した結果,いずれも肝脂肪化とともに肝線維化を改善することが示唆された.この機序としては酸化ストレスの軽減,炎症性,線維化サイトカインの抑制を介し,星細胞の活性化を抑制したためと考えられる. |