抄録 |
【目的】膵癌は早期発見が非常に困難であり感度の高いスクリーニング法の確立が望まれている.MRIは放射線被ばくや造影剤による身体的負担がなく,膵癌のスクリーニング法としての有用性を検討した.【方法】2006年10月から2012年8月までの間に当院で膵癌と診断した195例のうち,治療開始前のMRI拡散強調画Diffusion-weighted imaging(DWI)およびMRCP画像を検討しえた147例についてretrospectiveに検証した.DWIでは腫瘍部および非腫瘍部を含めた膵の拡散低下を陽性所見とし,MRCPでは尾側の主膵管拡張,体尾部での途絶を陽性所見とした.【結果】対象は男性80例,女性67例,年齢は中央値70歳,腫瘍径は3~110mm(平均31mm).部位は頭部89例(61%),体部43例(29%),尾部15例(10%)で,臨床病期はStageⅠ6例(4%),Ⅱ1例(1%),Ⅲ32例(22%),Ⅳa 62例(42%),Ⅳb 46例(31%)であった.DWIの所見は腫瘍部の拡散低下115例(78%),非腫瘍部を含めた膵の拡散低下15例(10%),拡散低下なし17例(12%).MRCPにおける主膵管の所見は拡張あり100例(68%),途絶あり14例(10%),異常なし33例(22%)であった.全症例における感度はMRCP単独,DWI単独,いずれか陽性でそれぞれ78%,88%,98%となり,腫瘍径別の検討では20mm未満(22例)の病変での感度はそれぞれ68%,82%,95%,20mm以上(125例)ではそれぞれ79%,95%,98%であった.病変部位別でも同様に検討し頭部で79%,96%,99%,体部で88%,91%,98%,尾部で40%,87%,93%であった.尾部ではMRCPでの感度が落ちるがDWIではどの部位でも同等であった.StageⅠの6例ではMRCPで全例に尾側の拡張を認めたが,DWIでは拡散低下を示すものは10mm以上の2例のみであった.【結論】MRCPとDWIを組み合わせることでほとんどの膵癌は検出可能である可能性あり,今後期待できる膵癌スクリーニング方法であると考えられた. |