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膵 基礎

タイトル P-164:

UPRT遺伝子武装腫瘍融解アデノウイルスを用いた膵癌の遺伝子化学療法の基礎的検討(1):免疫適格同種ハムスター膵癌モデルにおける有効性と安全性の評価

演者 長谷川 直之(筑波大学医学医療系消化器内科)
共同演者 安部井 誠人(筑波大学医学医療系消化器内科), 福田 邦明(筑波大学医学医療系消化器内科), 兵頭 一之介(筑波大学医学医療系消化器内科)
抄録 近年,癌細胞選択的に増殖する種々の腫瘍融解ウイルス(OV)が開発され,さらにそれらの癌遺伝子治療への応用(遺伝子武装OV)が注目されている.我々も,抗癌剤5-FUの効果を増強する酵素uracil phosphoribosyltransferase(UPRT)の遺伝子を搭載した腫瘍融解アデノウイルス(OAd),AxE1CAUPを用いた「遺伝子化学療法」のヒト胆道癌移植ヌードマウスでの有効性を報告した(Seo, et al. Cancer Res 2005;65:546-52).しかし,臨床での効果と安全性を予測するには,近年,Adが感染かつ免疫適格で安全性や免疫応答の評価に適することが判明したシリアンハムスターにおける検討を要する.【目的】本研究では,シリアンハムスターの同種膵癌HaP-T1皮下移植腫瘍モデルを用いて,AxE1CAUPと5-FUの併用による遺伝子化学療法の有効性と安全性を検討した.【方法】シリアンハムスター膵癌HaP-T1細胞におけるAxE1CAUPのin vitroでの増殖,UPRT発現,5-FU感受性増強をreal time PCR,Western blot法,WST-1法により,それぞれ検討した.ハムスターのHaP-T1皮下移植腫瘍に対して,AxE1CAUPを腫瘍内注入後,5-FUを腹腔内投与し,腫瘍径,体重を観察した.一部の動物では,腫瘍内のOAdの存在(免疫染色),UPRT発現(リアルタイムPCR,Western blot)および安全性の評価として肝,肺の組織学的変化を検討した.【結果】1)In vitroにおいて,AxE1CAUPは,HaP-T1に良好に感染,増殖し,UPRTを発現し,5-FU感受性を有意(P<0.01)に増強した.2)ハムスターHaP-T1皮下移植腫瘍において,AxE1CAUP/5-FU併用療法は,PBS群,AxE1CAUP群に比し有意(P<0.01)に強く腫瘍増殖を抑制した.体重減少や肝,肺の組織障害はみられなかった.【結論】免疫適格なAd感染動物であるシリアンハムスターの同種膵臓癌皮下腫瘍モデルにおいて,UPRT発現腫瘍融解Adと5-FUによる遺伝子化学療法の有効性と安全性が示された.
索引用語