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膵 基礎

タイトル P-165:

UPRT遺伝子武装腫瘍融解アデノウイルスを用いた膵癌の遺伝子化学療法の基礎的検討(2):シクロフォスファミドによる免疫抑制との併用効果

演者 長谷川 直之(筑波大学医学医療系消化器内科)
共同演者 安部井 誠人(筑波大学医学医療系消化器内科), 福田 邦明(筑波大学医学医療系消化器内科), 兵頭 一之介(筑波大学医学医療系消化器内科)
抄録 近年,癌細胞選択的に増殖する種々の腫瘍融解ウイルス(OV)とその遺伝子治療への応用(遺伝子武装OV)が注目されているが,宿主の抗ウイルス免疫の克服が課題である.高容量のシクロフォスファミド(CP)による免疫抑制が,OVの増殖を促進,その腫瘍融解効果を増強することが報告されたが,治療遺伝子で武装したOVの有効性に与える影響は全く不明である.我々は,抗癌剤5-FUの効果を増強する酵素uracil phosphoribosyltransferase(UPRT)の遺伝子を搭載した腫瘍融解アデノウイルス(OAd),AxE1CAUPを用いた「遺伝子化学療法」の有効性を,Ad感染動物であり免疫適格なシリアンハムスターの膵癌モデルにおいて確認し得た.【目的】本研究では,シリアンハムスターの同種膵癌皮下移植モデルにおいて,CPによる免疫抑制が,AxE1CAUP/5-FU遺伝子化学療法に与える影響について検討した.【方法】シリアンハムスターの同種膵癌皮下腫瘍に対し,AxE1CAUPを腫瘍内注入後,CP,5-FUを腹腔内投与し,腫瘍径,体重を観察した.一部の動物では,血清抗Ad抗体価を測定,腫瘍内のOAdの存在(免疫染色),UPRT発現(リアルタイムPCR,Western blot)を検討した.【結果】ハムスターHaP-T1皮下腫瘍において,AxE1CAUP/5-FU併用療法に高容量CPを追加すると,CP非追加群に比し,血清Ad中和抗体が抑制され,腫瘍内のOAd増殖・UPRT発現が増強し,5-FU投与後の抗腫瘍効果が有意(P<0.01)に増強した.体重減少や肝,肺の組織障害など副作用はみられなかった.さらに,臨床容量の中等量CPでも同様の抗腫瘍効果の増強が得られた.【結論】免疫適格なAd感染動物であるシリアンハムスターの同種膵癌モデルにおいて,臨床容量のシクロフォスファミドによる免疫抑制により,遺伝子武装腫瘍融解ウイルスの抗腫瘍効果が増強することが初めて判明し,抗ウイルス免疫の障害を克服するのに有効と考えられた.
索引用語