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膵 基礎

タイトル P-166:

ヒト膵癌細胞株におけるEMTに対する温熱処理の抑制効果についての検討

演者 木村 礼子(京都府立医科大学消化器内科)
共同演者 石川 剛(京都府立医科大学消化器内科), 岡嶋 学(京都府立医科大学消化器内科), 松山 竜三(京都府立医科大学消化器内科), 吉廣 聡子(京都府立医科大学消化器内科), 岡山 哲也(京都府立医科大学消化器内科), 坂元 直行(医聖会百万遍クリニック), 古倉 聡(京都府立医科大学消化器内科)
抄録 【背景・目的】膵癌は浸潤・転移能が高く,極めて予後不良ながんの1つである.近年,上皮間葉転換(Epithelial to Mesenchymal Transition,EMT)が,がん細胞の浸潤・転移に重要であることが明らかとなってきた.化学療法等に対する治療抵抗性やがんの再発に関わると考えられているがん幹細胞の一部もEMT phenotypeを呈することが報告されている.今回,ヒト膵癌細胞株を用いて,TGF-βおよびGemcitabine(GEM)によるEMT誘導能を評価し,温熱処理のEMT抑制効果について検討した.【方法】ヒト膵癌細胞株(PANC-1,MIAPaCa-2)を,TGF-βまたはGEMで刺激し,細胞の形態変化,EMTマーカーの変化(Vimentin,Snail等)を免疫蛍光染色,RT-PCRで評価した.また,EMT誘導刺激前に43℃・1時間の温熱刺激を行い,温熱処理がEMTに及ぼす影響について評価した.【結果】TGF-β刺激によって,多くの細胞で紡錘形変化が見られた.また,Vimentin,Snailの発現は増強した.さらに,GEM刺激によっても濃度依存性にVimentin,Snailの発現が増加した.また,それらの発現は温熱前処理によって抑制された.【考察】TGF-βおよびGEM刺激によりヒト膵癌細胞株でEMTが誘導されることが示された.GEMによるEMT誘導は,GEMに対する治療抵抗性獲得機序の1つである可能性が考えられ,さらにはGEMによる浸潤・転移誘導の可能性も示唆された.温熱処理がEMT誘導を抑制することから,Hyperthermiaは膵癌のGEM耐性獲得の抑制ならびに進展抑制に寄与する可能性があると考えられ,この点を踏まえさらに検討する必要がある.
索引用語