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膵 基礎

タイトル P-168:

慢性膵炎におけるp38MAPK,HSP27の役割

演者 櫻井 俊治(近畿大学消化器内科)
共同演者 樫田 博史(近畿大学消化器内科), 工藤 正俊(近畿大学消化器内科)
抄録 【目的】慢性炎症と発癌を関連づける因子として活性酸素種(ROS)の重要性が示唆されている.Heat shock protein 27(HSP27)はROSの制御および組織の恒常性維持に重要な蛋白質である.p38 mitogen-activated protein kinase(p38MAPK)は細胞の生理的およびストレスに対する病態生理的な状況において重要な役割を果たしており,近年,私たちはp38MAPKがHSP27の発現を制御し,肝臓における恒常性維持に貢献することを報告した(Cancer Cell 2008).本研究では慢性膵炎の発生におけるp38MAPKの役割を解明することを目的とする.【方法】自然発症慢性膵炎モデルであるWBN/Kobラットに,4週齢の時点より6週間,p38阻害剤SB203580を皮下投与した.膵癌細胞株PANC-1,p38阻害剤およびsiRNAを用いてp38,HSP27の機能解析を行った.【結果】コントロールと比べて,p38阻害剤を投与したラット膵臓では有意に高度な組織損傷と炎症反応を呈した.膵実質細胞の障害が高度な一方で,膵星細胞,ラ氏島細胞への影響は限定的であった.p38を阻害された膵臓において,HSP27の発現は低下しROSの蓄積が亢進する.またp38阻害剤はアポトーシス促進蛋白であるBADの発現を高めた.HSP27 knock-downにより,TNF-alphaによるROS蓄積および細胞死が増強した.p38MAPKには4つのアイソフォーム(alpha,beta,gamma,delta)があるが,細胞株においては各々異なった機能をもっており,p38betaがROSの制御に重要である.【結論】p38MAPKはHSP27の発現を高め,BADの発現を低下させることで,ROSおよび細胞死を制御し慢性膵炎の発症を抑制する.p38MAPK-HSP27 axisは,慢性膵炎における発症リスクを評価する新規分子マーカーおよび新規治療標的となる可能性が示唆された.
索引用語