セッション情報 ワークショップ7(消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と性差

タイトル 消W7-9:

虚血性腸炎発症における性差に関する検討

演者 村山 洋子(市立伊丹病院・消化器内科)
共同演者 満田 千晶(市立伊丹病院・消化器内科), 筒井 秀作(市立伊丹病院・消化器内科)
抄録 【目的】虚血性腸炎は腸管粘膜の血流障害によって、粘膜面に潰瘍やびらんを生じる可逆性の病変である。虚血性腸炎の発症には血管側因や腸管側因子の関与とともに性差による成因の違いが存在している可能性が推測される。しかし、今まで性差に視点を置いた検討は十分になされていない。そこで今回我々は虚血性腸炎の発症因子と性差との関連についてretrospectiveに検討した。【対象と方法】H17年1月からH23年7月までの期間に当院で経験した虚血性腸炎229例(19~92歳 平均年齢は62±16.2歳)を対象とし、BMI、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙歴、飲酒歴、便秘、腹部手術歴に関して男女別に検討を行った。【成績】罹患率では、男性57例(50歳未満23例、50歳以上34例)、平均年齢55.0±18歳、女性172例(50歳未満29例、50歳以上143例)、平均年齢64.3±15歳であり、50歳以上の女性の罹患率が有意に多く、平均年齢も女性において有意に高かった。男女別ではBMI (kg/m2)は22.6±2.9、22.3±3.1、高血圧症21%、33.7%、糖尿病7%、8%、脂質異常症12.2%、25%(p=0.0421)、喫煙歴43.8%、10.4%(p<0.0001)、飲酒歴43.8%、11%(p<0.0001)、便秘10.5%、43%(p<0.0001)、腹部手術歴12.2%、38.3%(p=0.0003)に認めた。男性では有意に喫煙歴、飲酒歴が多いのに対して女性では脂質異常症、便秘、腹部手術歴が多かった。内視鏡像では一過性型75%(男女比は37:134例)、狭窄型は25%(男女比は20:38例)であり、男性に狭窄型が多い傾向にあった。(p=0.0506)また、50歳未満、50歳以上の男女別の生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)の罹患者群においては、50歳未満(男性/女性)は2.8%、3.7%、50歳以上(男性/女性)は13.4%、79.6%であり、50歳以上の女性において、有意に多い傾向を認めた。【結論】虚血性腸炎は50歳以上の女性に有意に多く、腸管側因子に生活習慣病が重複することが虚血性腸炎の発症に関与している可能性が示された。
索引用語 虚血性腸炎, 性差