抄録 |
[目的]治癒切除大腸癌を年齢階級別に予後を中心に比較検討した.[対象,方法]1995年6月から2010年7月まで治癒切除術を施行した結腸癌184例,直腸癌103例,計287例を対象とした.これらを59歳以下57例(若年群),60~79歳184例(壮年群),80歳以上(高齢群)に分けて比較した.累積生存率はKaplan-Meier法で求め,Logrank-testでp<0.05を有意差ありとした.[結果]占居部位では上行結腸が高齢群14(30.4%),若年群10(17.5%),壮年群24(13%)と有意に高齢群に多かった(p<0.05).組織学的進行程度は3群ともstage2が多く有意な差を認めなかった.再発例は若年群12(21.1%),壮年群26(14.1%),高齢群8(17.4%)と若年群で多かったが有意差は認めなかった.累積5年生存率は若年群88.3%,壮年群86.6%,高齢群80.2%と高齢群で不良であったが有意差はなかった.stage別ではstage1~3aで差はなかったが,3bで若年群78.7%(n=11),壮年群59.1%(n=18),高齢群33.3%(n=3)と有意に(p=0.03)高齢群が不良であった.リンパ節郭清度別では若年群,壮年群で差はなかったが,高齢群でD1:66.7%(n=8),D2:85.1%(n=16),D3:82.2%(n=22)と有意差はないものの(p=0.55)D1が不良であった.術前の栄養学的予後指数(PNI)(血清Alb.値×10+0.005×末梢血リンパ球数)(45以上が望ましい)の平均は若年群53(n=29),壮年群50(n=84),高齢群45(n=21)と有意に(p<0.0001)高齢群で低かった.PNI値45以上を高値群,44以下を低値群に分けて累積5年生存率を求めると,若年群,壮年群で差はないが高齢群では高値群100%(n=8),低値群66.7%(n=13)と有意差はないが低値群で不良であった.[結語]年齢階級別で予後に有意な差はなかったが,stage3bでは80歳以上の高齢群の予後が不良であった.また高齢群のD1が予後不良で,高齢群にも適切な郭清が必要と考えられた.PNIは高齢群で低値で44以下の低値群の予後が不良であった. |