セッション情報 ポスター

大腸 その他1

タイトル P-240:

重症病棟における栄養療法により刺激性下剤に頼らない便秘のコントロールが可能となる

演者 佐藤 武揚(東北大学病院高度救命救急センター)
共同演者 久志本 成樹(東北大学病院高度救命救急センター)
抄録 背景:重症患者に対する栄養管理に於いては早期に開始し継続する経腸栄養が重要であるが,そのためのポイントは便秘と下痢のコントロールである.従来便秘に対しては急性/慢性の如何に関わらず刺激性下剤が頻要される傾向にあるが,連用による効果減弱が知られている.目的:当施設における刺激性下剤の使用状況を明らかにし,2009年より開始した栄養療法の介入効果を検討する.方法:2009年より早期経腸栄養とSynbioticsを軸とした栄養療法を行った.2008-2011の間に当施設に入院した症例を対象に,原疾患と予後,栄養剤,整腸剤,刺激性下剤,広域抗菌薬の使用量,抗菌薬関連腸炎の発生頻度を解析した.結果:APACHE-IIscoreやSOFAスコアで比較した年毎の重症度に有意差はない.2008年には1症例あたり7.8包の刺激性下剤が使用されていたが2011年には1.0包/症例まで低下した.整腸剤は11.5包/症例から19.3包/症例まで増加した.下痢の発生頻度,抗菌薬関連性腸炎の発生頻度は減少し,症例あたりの広域抗生剤使用数は10.7本/症例から5.5本/症例へと減少した.平均在室日数は8.6日から7.1日へ短縮し入院数は737例/年から1014例/年へ増加した.長期入室例の比較では症例数は減少し,死亡率は24%から16%へ低下した.考察:便秘は便が出ない日数や腹部症状だけで判断され刺激性下剤が多用される傾向があるが,刺激性下剤は連用により効果が減弱し,身体的,精神的依存が生じやすい.便秘による怒責は脳,心血管イベントを誘発する恐れがあり適切に対処する必要があるが,便秘は予防が大事であり,日数や症状だけでなく理学所見や画像所見により判断されるべきである.早期経腸栄養とともに腸内細菌叢に配慮したSynbiotic therapyを中心とした栄養管理は集中治療患者の病態,転帰を改善し,広域抗菌薬の投与減少による耐性菌発現抑制とともに短期,および長期の刺激性下剤使用に伴う合併症を減らす可能性がある.
索引用語