セッション情報 ポスター

肝癌5

タイトル P-250:

切除不能肝癌の分子標的治療における肝障害~血清コリンエステラーゼ値に着目して

演者 竹田 治彦(大阪赤十字病院消化器科)
共同演者 西川 浩樹(大阪赤十字病院消化器科), 喜多 竜一(大阪赤十字病院消化器科), 木村 達(大阪赤十字病院消化器科), 大崎 往夫(大阪赤十字病院消化器科)
抄録 【背景/目的】大半に前治療歴を有する我が国の進行肝癌症例においては,sorafenib投与中の肝障害がしばしば治療経過を左右する.今回我々は肝機能の指標として血清コリンエステラーゼ値(ChE)に着目し,sorafenibを含めた集学的治療における意義につき検討した.【対象】当院で2012年2月までにSorafenibを導入した切除不能進行肝癌102例のうち導入前ChEが測定された93例.平均年齢70歳,男:女=72:21例.Stage2/3/4A/4B:4/32/16/41例.【方法】1.ChE高値群(ChE>140mg/dL)46例と低値群(ChE<140mg/dL)47例の2群に分け,sorafenib導入後の肝機能異常の発現状況および予後につき,肝予備能や腫瘍因子,患者因子を共変量として多変量解析を行った.2.切除不能診断時からsorafenib導入までのTACE施行状況とChEの推移につき解析した.【結果】1.Grade3肝障害発生率はChE高値群:低値群=4.3%:42.6%(p<0.001)であった.多変量解析にてChE低値,腹水有が独立した肝障害の危険因子として抽出された.ChildAでのsubgroup解析ではChEが唯一の肝障害危険因子であった.また全生存期間中央値はChE低値群:高値群=143日:350日で(p=0.009),ChE低値は腹水有,骨転移有とともに予後不良因子であった.2.sorafenib前には平均2.4回のTACEが施行され,ChE中央値はTACE前:後=176:139mg/dLと有意な低下を認めた.TACE複数回施行例での検討では,施行毎に有意にChE値の低下を認めた.【考察】Sorafenibと他治療との組み合わせについて検討が進む中で,治療に伴う肝機能障害は包括的な治療計画に影響すると思われる.今回の検討で,sorafenib導入前のChE低値は肝障害発現の危険因子かつ予後不良因子と考えられた.TACE回数を重ねることでChEの有意な低下がみられ,かつChE低値群ではsorafenibの治療効果が不十分であることから,全身化学療法としてのsorafenibの効果を期待するにあたっては,漫然とTACEを繰り返すことなく肝機能の維持された状態でのsorafenib導入が望ましいと考えられる.
索引用語