セッション情報 ポスター

肝癌7

タイトル P-286:

高度進行肝細胞癌に対するDSMを用いた一時的肝動脈塞栓療法の有用性

演者 伊藤 智康(順天堂大学消化器内科)
共同演者 崔 仁煥(順天堂大学消化器内科), 金澤 亮(順天堂大学消化器内科), 小森 寛子(順天堂大学消化器内科), 斉藤 紘昭(順天堂大学消化器内科), 稲見 義宏(順天堂大学消化器内科), 松村 祐志(順天堂大学消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学消化器内科)
抄録 【目的】当院では,gelatin sponge細片を使用する肝動脈塞栓術が施行困難な高度進行肝細胞癌に対してDegradable Starch Microspheres(以下DSM)を併用した一時的肝動脈化学塞栓療法(以下DSM-TACE)を施行している.今回,高度進行肝細胞癌に対するDSM-TACEの治療効果と合併症について検討した.
【方法】対象は2003年3月から2012年3月までに当院で2回以上のDSM-TACEを施行したVp2またはVv2以上の高度進行肝癌28例である.男性27例,女性1例で年齢は平均67.17歳.基礎疾患はHBV 5例,HCV 15例,NonBNonC 8例.Child-PughはAが18例,Bが8例,Cが2例であった.
方法は塩酸エピルビシン60mg/bodyを生理食塩水20mlに溶解したものをone shotで注入後,マイトマイシン10mg/bodyとDSM 300mgの混和液を緩徐に注入した.上記治療の効果が乏しいと判断した症例にはフルオロウラシル1000mg/bodyを生理食塩水20mlに溶解したものをone shotで注入後,シスプラチン50mg/bodyとDSM 300mgの混和液を緩徐に注入した.上記薬剤注入後も血流低下が乏しい場合,DSMと造影剤の混和液のみ血流低下を認めるまで追加投与した.治療前後で採血を施行し,血算,生化学,凝固能,腫瘍マーカーをチェックした.治療後に約4週間の休薬期間を設け,1コースとし,2コース施行毎に抗腫瘍効果の判定としてCTを施行した.
【結果】抗腫瘍効果はCR 1例(3.6%),PR 6例(21.4%),SD 14例(50%),PD 7例(25%)であり,奏功率は25%,病勢コントロール率は75%であった.腫瘍マーカーは18例(60%)で治療前値より低下した.薬剤投与後15例で発熱,5例で腹痛,3例で食欲低下を認めたが全例一過性であった.無増悪期間は平均119日,生存期間中央値は10ヶ月,1年生存率は44%であった.
【結語】gelatin sponge細片等を使用する血管塞栓術が施行困難な血管侵襲を有する高度進行肝細胞癌に対してDSMを用いた一時的肝動脈化学塞栓療法は有効な治療法となる可能性が示唆された.
索引用語