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肝画像

タイトル P-297:

造影超音波による肝癌の分子標的イメージング

演者 杉本 勝俊(東京医科大学消化器内科)
共同演者 根岸 洋一(東京薬科大学薬物送達学教室), 森安 史典(東京医科大学消化器内科)
抄録 【目的】分子標的イメージングはpositron emission tomography(PET)を中心に開発され,現在臨床応用されている.しかし,特定の分子を標的とした造影剤の開発により,超音波においても分子標的イメージングが開発されつつある.今回我々は,VEGFR2を標的とした分子指向性バブル(BR55)を使用する機会を得た.その特性につき従来の分子非指向性バブル(SonoVue)と比較して報告する.【方法】ヒト肝細胞癌株(Hep3B)をマウスの皮下に移植し作製した肝癌モデル(n=10),および健常マウスの肝臓(n=6)に対しBR55とSonoVueマイクロバブルをそれぞれ用いて造影実験を行った.超音波診断装置はAplio XVを用い,超音波造影剤をbolus静注後,10分間のdynamic imagingを撮像した.得られた時間輝度曲線を専用の解析ソフト(ImageLab)を用いて解析し,7つの血流パラメータを定量的に測定した.そして,得られた各造影剤間の血流パラメータを統計学的に比較した.さらに,腫瘍部と健常肝実質に対し抗VEGFR2抗体を用いて免疫染色し,VEGFR2の発現に関しても検討した.【成績】腫瘍部では,造影早期相においてBR55はSonoVueとほぼ同等の造影動態を呈した.しかし,その後SonoVueは速やかに減衰するのに対し,BR55の減衰はなだらかであった(mean transit time:P=0.0189).健常肝でも,造影早期相においてBR55はSonoVueとほぼ同等の造影動態を呈した.しかし,10分後の造影後期相において,BR55はSonoVueと比べ著明な取り込みを認めた(Ramp Slope:P=0.0099).免疫組織学的検討では,腫瘍の血管内皮細胞にVEGFR2がまばらに,かつ弱く発現していた.一方,健常肝実質の類洞には,びまん性に,かつ強く発現していた.【結論】BR55マイクロバブルは,腫瘍部のVEGFR2の発現を反映しており,今後臨床における有用性が示唆された.しかし,正常肝実質にも取り込みがみられ,その機序につき更なる検討が必要である.
索引用語