セッション情報 ポスター

肝硬変2

タイトル P-322:

非代償性肝硬変に伴う難治性腹水に対するバソプレシンV2受容体拮抗剤tolvaptanの臨床効果の検討

演者 小橋 春彦(岡山赤十字病院肝臓内科)
共同演者 歳森 淳一(岡山赤十字病院肝臓内科), 横山 元浩(岡山赤十字病院消化器内科), 浅野 基(岡山赤十字病院消化器内科), 矢部 俊太郎(岡山赤十字病院消化器内科), 片岡 恵美子(岡山赤十字病院消化器内科), 安藤 智子(岡山赤十字病院消化器内科), 橋本 健二(岡山赤十字病院消化器内科), 重歳 正和(岡山赤十字病院消化器内科), 前島 玲二郎(岡山赤十字病院消化器内科), 井上 雅文(岡山赤十字病院消化器内科)
抄録 【目的】非代償性肝硬変により難治性腹水を呈する症例に対するバソプレシンV2受容体拮抗薬tolvaptanの有効性と安全性について検討する.
【方法】対象は非代償性肝硬変の3例(Child-Pughスコア9~13,グレードC2例,B1例).男1例女2例,平均年令81才,肝硬変の原因はアルコール1例,HCV2例.3例とも中等度の慢性腎不全を合併していた.いずれも利尿剤,アルブミン製剤,腹水穿刺排液に抵抗性の難治性腹水を認めた.この3例にtolvaptan 15mg/日(経口)を追加投与し,尿量,体重,腹囲,血液肝機能,電解質,腎機能を経時的に記録し,それぞれの平均値を投与前と2週間後で比較した.
【結果】(1)1日尿量は前1,283mlから後2,410mlへ増加,体重は前54.3kgから後50.5kgに減少,腹囲は前90.4cmから後84.0cmに減少し,3例とも腹水の減少を認めた.(2)血清Naは前138 mEq/L,後140 mEq/L,Kは前3.8 mEq/L,後3.9 mEq/L,BUNは前36.4mg/dL,後42.3 mg/dL,Creは前2.34mg/dL,後2.45と電解質および腎機能には著変なかった.(3)血清アルブミンは前2.7g/dL,後2.6g/dL,T.BILは前1.6mg/dL,後0.8mg/dLと,肝予備能は著変なかった.
【結論】非代償性肝硬変にはしばしば治療抵抗性の腹水が合併する.特に腎不全合併例ではK保持性利尿薬の使用が制限されるため,さらにコントロールが困難となる.tolvaptanはバソプレシン受容体を選択的に阻害することにより水利尿を促進する薬剤で,高ナトリウム血症の合併に注意を要するが,今回の3例から慢性腎不全合併非代償性肝硬変による難治性腹水にも有効であることが示された.
索引用語