セッション情報 ポスター

肝 他2

タイトル P-328:

肝細胞癌発症と背景肝M-CSF発現との関連に関する検討

演者 河野 寛(山梨大学第1外科)
共同演者 古屋 信二(山梨大学第1外科), 原 倫生(山梨大学第1外科), 平山 和義(山梨大学第1外科), 藤井 秀樹(山梨大学第1外科)
抄録 【はじめに】ヒト肝細胞癌において背景肝に発現するmacrophage colony stimulating factor(M-CSF)と肝癌発症は正相関するが,その機序は未だ不明である.今回,マウス肝発癌モデルとC型肝炎ウイルス感染を背景とする肝細胞癌症例で肝発癌とM-CSFの関連について検討した.【方法】検討I:op/opとlittermateマウス(LT)を用いジエチルニトロサミン(DEN)を腹腔内投与し炎症性肝発癌モデルを作製し,発癌率を検討.肝内活性化Mφ分布と血管新生を免疫組織染色法で,肝MφのM1/M2比をFACS法とRT-PCR法で検討した.検討II:当科において根治的切除を施行したHCV陽性HCC患者の検体を用い,非腫瘍部M-CSF発現を抗M-CSF抗体,新生血管発現を抗CD31抗体,M2Mφ分布を免疫組織染色法にて検討.これらの発現と臨床的因子,病理学的因子,再発までの期間(DFS)に関して統計解析を行った.検討III:分離肝Mφと血管内皮細胞(VEC)をM-CSF存在下で共培養し,増殖を検討した.【結果】検討I:LTと比較し,op/opでは発癌率,腫瘍数,最大腫瘍径のいずれにおいても有意に低下.活性化Mφの分布は,LTでは正常肝組織・腫瘍内部ともに認められるのに対して,op/opでは腫瘍内部とその辺縁部においてのみ認めた.DEN投与後の発癌マウスでは,op/opにおいてCD204+/CD68+比と,CD163 mRNA発現がLTと比較して有意に低下.腫瘍内の新生血管はLTにおいて有意に増加.検討II:非腫瘍部M-CSF発現と,腫瘍周囲浸潤M2 Mφ数ならびに腫瘍周辺新生血管発現には正相関を認めた.M-CSFならびに新生血管発現が高発現群においてDFSが有意に短縮していた.M-CSF発現は,単変量解析により独立した予後因子であった.検討III:VECはM-CSF存在下肝Mφ共培養で増殖が最も亢進した.【考察】背景肝に発現するM-CSFは,M2Mφの比率と血管新生を増加させることで腫瘍増殖を促進し,肝細胞癌再発期間を短縮させている可能性が示唆された.
索引用語