セッション情報 ポスター

胆道 結石

タイトル P-406:

脂質異常症と胆石症~コレステロールのcholecystohepatic shunt機構の可能性について~

演者 岸川 暢介(広島大学病態薬物治療学講座)
共同演者 菅野 啓司(広島大学病態薬物治療学講座), 田妻 進(広島大学病態薬物治療学講座)
抄録 【背景と目的】我々は脂質異常症による胆石症成立への関わりと脂質異常症治療薬による胆石形成性への影響を報告してきた(J Clin Gastro 1998, Metabolism 1995&2008, Am J Cardiol 1995).胆汁コレステロールは主に肝SR-B1を介するHDLから供給されるが,2型糖尿病では腸管コレステロール吸収亢進が胆汁脂質過剰排泄を惹起する.腸管コレステロール吸収はその輸送担体NPC1L1が担当するが,その発現は肝臓にも強く肝胆道疾患との関わりが注目されている.今回我々は脂質異常症に関わる代表的消化器疾患である胆石症の脂質代謝動態を解明する目的で胆石症患者にNPC1L1選択的阻害剤Ezetimibeを投与し,その変動を臨床的に検討するとともに,関係臓器におけるNPC1L1の発現を検討してその存在意義を推論した.【方法】1.臨床的検討:脂質異常症を伴う胆石症患者8例(非手術例4例,胆摘後4例)を対象にEzetimibe(10mg/day)を3ヶ月間投与して,血清脂質,コレステロール合成マーカーLathosterolおよび吸収マーカーCampesterolを解析し,内視鏡的に回収した十二指腸胆汁も分析した.2.基礎的検討:ヒト肝細胞株(HepG2),ヒト胆嚢上皮細胞株(OCUG-1)におけるNPC1L1mRNA発現を検討した.【成績】1.血清脂質分析では全例でT-cholおよびLDL-Cは有意に低下し,吸収指標Campesterolも有意に低下したが,合成指標Lathosterolは増加する傾向にあった.一方,胆汁資質では胆摘例では催石指数が上昇する傾向にあったが,非手術例では有意な変化を示さなかった.2.NPC1L1はヒト肝細胞および胆嚢上皮細胞においてmRNAレベルでの発現が確認された.【考察と結語】Ezetimibe投与により胆摘例で胆汁コレステロールの相対的上昇を認めたことから,胆嚢のリザーバー機能が胆汁脂質代謝の安定性に寄与する可能性が示唆された.また,胆嚢に選択的コレステロール吸収担体の発現を認めたことから,cholecystohepatic shuntによる胆汁脂質安定化メカニズムの存在と胆摘によるその破綻が推定された.
索引用語