セッション情報 ポスター

胃癌

タイトル P-415:

胃粘膜上皮のHSP27発現は上皮内癌の発生リスクと負の相関を示す

演者 永田 嘉昭(近畿大学医学部消化器内科)
共同演者 櫻井 俊治(近畿大学医学部消化器内科), 足立 哲平(近畿大学医学部消化器内科), 高山 政樹(近畿大学医学部消化器内科), 峯 宏昌(近畿大学医学部消化器内科), 永井 知行(近畿大学医学部消化器内科), 川崎 正憲(近畿大学医学部消化器内科), 朝隈 豊(近畿大学医学部消化器内科), 松井 繁長(近畿大学医学部消化器内科), 樫田 博史(近畿大学医学部消化器内科), 工藤 正俊(近畿大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】腸型胃癌は,慢性炎症および萎縮性胃炎を経て発癌する.さまざまなストレスにより誘導されるheat shock protein 27(HSP27)は,活性酸素種(ROS)の蓄積を阻害し,炎症および発癌において重要な役割を果たしていることが示唆されている.胃癌とその背景胃粘膜におけるHSP27の発現を調べ,その胃発癌リスクとの相関を検討した.【方法】real-time quantitative PCRを用いて,30例の早期胃癌患者の癌組織と背景胃粘膜組織および30例の非担癌患者の胃粘膜におけるHSP27の発現を定量した.また,30例の進行胃癌患者の癌組織に対して抗HSP27抗体による免疫組織染色を行った.【結果】HSP27の発現は萎縮性胃炎の進行度と負の相関を示していた.担癌患者の背景胃粘膜におけるHSP27の発現は非担癌患者の粘膜に比べて有意に低かった(P=0.004).更にTNF-alphaで処理した胃細胞株において,HSP27をknock-downするとROSの蓄積と細胞死が増加し,HSP27によるROS産生の抑制が炎症および発癌を抑制する可能性が示唆された.一方で,ヒト進行癌においては,高分化型より低分化型腫瘍において高いHSP27の発現レベルを示した.癌細胞の脱分化とepithelial-mesenchymal transition(EMT)との関連が報告されている.胃癌MKN-1細胞においてHSP27をknock-downするとE-cadherinの発現が増加しvimentinとsmooth muscle actinの発現が低下したが,MKN-74細胞ではHSP27はEMTに影響を及ぼさなかった.【結論】胃粘膜上皮におけるHSP27発現は,萎縮性胃炎および胃上皮内癌の発生リスクと負の相関を示し,発癌リスクを評価する新規分子マーカーとなる可能性が示唆された.その一方で,癌細胞におけるHSP27発現は低分化度と正の相関を示す.
索引用語