セッション情報 ポスター

胃癌

タイトル P-418:

CD44variantを介した胃癌の抗癌剤耐性機序の検討

演者 岡田 佐和子(慶應義塾大学消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大学消化器内科), 正岡 建洋(慶應義塾大学消化器内科), 津川 仁(慶應義塾大学消化器内科), 松崎 潤太郎(慶應義塾大学消化器内科), 福原 誠一郎(慶應義塾大学消化器内科), 平田 賢郎(慶應義塾大学消化器内科), 森 英毅(慶應義塾大学消化器内科), 佐谷 秀行(慶應義塾大学先端医科学), 日比 紀文(慶應義塾大学消化器内科)
抄録 【目的】癌の治療抵抗性へのcancer stem cell(CSC)の関与が知られている.CD44はCSCの表面マーカーとして注目されており,そのsplicing variantは病態特異的な分布を示し,癌の病期や予後との関連が報告されている.近年,CD44 variant9(CD44v9)がシスチントランスポーターxCTの安定化に作用し,細胞内Glutathione(GSH)濃度を上昇させ,酸化ストレス耐性,ひいては活性酸素種(ROS)産生性抗癌剤であるCisplatin(CDDP)耐性獲得に関わる可能性が示され,表面マーカーとしてだけでなく,治療抵抗性に関わることが報告された.今回,CDDP同様に胃癌化学療法の標準的治療薬であるFluorouracil(5-FU)について,CD44v9発現による耐性獲得の有無とその機序について検討した.【方法】CD44陰性中分化胃癌細胞株MKN28に,発現vectorを用いCD44 standard(CD44s)発現MKN28(CD44s-MKN28)及びCD44v9発現MKN28(CD44v9-MKN28)を構築した.5-FUによる細胞死をMTS assayで評価,5-FU投与後の細胞内GSH濃度を発光セルベースアッセイで,細胞内ROSはCM-H2DCFDAを用いてFACS解析にて評価した.【結果】5-FU処理48時間後のCD44v9-MKN28の生存率は,CD44s-MKN28,MKN28と比較し有意に上昇し(p<0.05),50%阻害濃度も上昇した(p=0.05).また,50 μg/mL 5-FU処理により,MKN28では細胞内ROS量が2.5倍に亢進したが,CD44v9-MKN28内ROS量の亢進は1.7倍に抑えられ,5-FUによる細胞死は細胞内ROS亢進に依存すると考えられた.また,5-FU処理後の細胞内GSH濃度は,MKN28では変化しなかったのに対し,CD44s-MKN28では2.7倍,CD44v9-MKN28では21.5倍に上昇した.従って,CD44v9発現に伴う細胞内GSH量亢進依存的酸化ストレス抵抗性の獲得が,5-FU耐性化に寄与していると考えられた.【結論】胃癌におけるCD44v9発現による酸化ストレス耐性獲得がCDDPのみならず5-FUに対する抗癌剤耐性に関与している可能性が示唆された.
索引用語