セッション情報 ポスター

胃・十二指腸 潰瘍・出血

タイトル P-440:

幽門側胃切除術後の吻合部潰瘍の発生に寄与する因子に関する検討

演者 宮地 正彦(愛知医科大学消化器外科)
共同演者 清田 義治(愛知医科大学消化器外科), 木村 研吾(愛知医科大学消化器外科), 田嶋 久子(愛知医科大学消化器外科), 倉橋 真太郎(愛知医科大学消化器外科), 山中 美歩(愛知医科大学消化器外科), 藤崎 宏之(愛知医科大学消化器外科), 大橋 紀文(愛知医科大学消化器外科), 永田 博(愛知医科大学消化器外科), 鈴村 和義(愛知医科大学消化器外科), 野浪 敏明(愛知医科大学消化器外科)
抄録 【目的】幽門側胃切除後に併発する吻合部潰瘍の発生を予防するために胃酸分泌を司る胃底腺領域を切除する広範囲切除が基本的に施行されている.幽門側胃切除術後に吻合部潰瘍を併発例において,発症要因,病態を明らかにするため検討した.【対象】過去13年間に幽門側胃切除術を施行し,1年以上経過例で吻合部潰瘍を併発した10例において,病態,発症因子,治療法を検討した.【結果】男性9例,女性1例と男性に多く,手術時年齢は40歳代4例,50歳代1例,60歳代3例,70歳代2例と若年者に多かった.胃癌例が8例(4.8%),十二指腸潰瘍狭窄例が2例(50%)で十二指腸潰瘍狭窄術後に高頻度に認めた.胃切除範囲は左胃大網動脈の最終前枝まで切除し,迷走神経を本幹で切離した.再建法はダブルトラクト(DT)法(胃空腸吻合から空腸十二指腸吻合までの長さ15cm前後)9例(9.1%),Billroth I(BI)法1例(2.5%)であり,Billroth II法,Roux-en Y(R-Y)法(胃空腸吻合から空腸空腸吻合まで45cm)ではなかった.DT法では空腸,BI法では十二指腸に潰瘍を吻合部直上ではなく,1-2cm肛門側に認めた.全例PPIで軽快し,穿孔,狭窄例はなかった.食道炎,残胃炎例をなかった.本症は50歳以下の男性に多く,PPIが有効であり,さらに十二指腸潰瘍狭窄例の術後吻合部潰瘍発生率が高いことからも,残胃が胃酸分泌能を有し,酸に弱く,十二指腸液による中和が起こりにくい挙上空腸に潰瘍ができたと考える.DT法より胃酸の中和能を有する十二指腸液の逆流が生じにくいR-Y法より,DT法で著明に多いことから,胃酸だけでなく,腸液も混和することによりDT法で吻合部潰瘍が多いと推察する.【結語】50歳以下の男性で胃切除,ダブルトラクト再建後では吻合部潰瘍が多いため,このような症例に潰瘍症状があれば,早期にPPIを行なうことが有効である.PPIなどの制酸剤の予防的投与は今後検討すべき課題と考える.
索引用語