セッション情報 ポスター

胃癌 化学療法2

タイトル P-456:

抗癌剤化学療法に伴う比較的まれと思われる重篤な合併症3例の経験

演者 尾本 秀之(深谷赤十字病院外科)
共同演者 伊藤 博(深谷赤十字病院外科), 諏訪 敏一(深谷赤十字病院外科)
抄録 【目的】現在消化器癌に対する抗癌剤化学療法は多岐におよんでいる.今回我々は比較的まれと思われる重篤な合併症を3例経験したので報告する.【症例1】76歳男性.以前より胃体部癌を指摘されていた.患者本人が手術を拒否し,TS-1による治療の方針となり80mg/日で治療を開始.day15にGrade 4の血小板数の減少を認めたため休薬したが,その後に白血球数もGrade 4の減少を認めた.ノイトロジン投与および血小板輸血など保存的治療により軽快した.白血球数,血小板数共にGrade 4と著明な減少を示す重篤な骨髄障害を併発し,比較的低頻度な病態と思われた.【症例2】73歳女性.Rs癌,肝転移に対し高位前方切除術後にアバスチン+XELOXを施行.1コース目終了後に持続性の下痢(Grade3)と経口摂取不能による全身衰弱が出現.便の細菌培養でCD toxinが検出されバンコマイシンを投与,次第に軽快した.Clostridium difficile関連下痢症は抗菌薬投与に伴う合併症の一つとして知られている.抗癌剤投与に伴う発症例の報告はまだ少なく,認識も低いと思われた.【症例3】78歳女性.上行結腸癌,多発肝転移に対し右半結腸切除術後にTS-1を80mg/日(4週投与,2週休薬)を5クール施行後に多量の腹水貯留と著明な両下肢の浮腫が出現.CTでは肝臓は著明に萎縮し表面凹凸不整と硬変肝様であった.血液検査所見ではアルブミン値の低下,アンモニア値の上昇,血小板数の減少など非代償性肝硬変,肝不全の状態であったが保存的に軽快した.UFTでは少数の報告例がみられるが,TS-1が原因と思われる重篤な肝障害の報告はほとんど見られない.TS-1中のテガフールの関与が示唆された.【結語】抗癌剤化学療法中には時として患者の生命を脅かしかねない思わぬ重篤な合併症に遭遇することがある.低頻度な病態ではあるが,治療開始早期での患者の全身状態の把握,継続治療中での定期的な検査,異常の早期発見の重要性を再認識した.
索引用語