セッション情報 ポスター

肝 基礎

タイトル P-467:

選択的plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)阻害剤による肝線維化抑制効果

演者 野口 隆一(奈良県立医科大学第三内科)
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医科大学第三内科), 相原 洋祐(奈良県立医科大学第三内科), 堂原 彰敏(奈良県立医科大学第三内科), 守屋 圭(奈良県立医科大学第三内科), 浪崎 正(奈良県立医科大学第三内科), 宮田 敏男(東北大学大学創生応用医学研究センター分子病態治療学), 福井 博(奈良県立医科大学第三内科)
抄録 【目的】線溶系阻害因子plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)は体内で線溶系以外のさまざまな生理反応にかかわり,炎症などにおいて急激な発現上昇を来たすことが知られている.我々はこれまでに,PAI-1が肝線維化進展に重要な役割を果たしていることを報告してきたが,今回は,選択的PAI-1阻害薬(PAI-1-I)の肝線維化抑制効果について作用機序を含めて検討した.【方法】雄性F344ラットにCDAA(コリン欠乏アミノ酸)食を投与して実験的肝線維症を作成した.PAI-1-I 5mg/kg/dayを経口投与し,8週間後に犠死させ,肝線維化および各種線維化関連指標マーカーへの影響について検討した.肝線維化の程度は組織学的に評価すると共にイメージアナライザーによる半定量を行い,各群間で比較検討した.活性化肝星細胞(Ac-HSC)への作用を検討するために,α-SMA免疫染色に加えてTGF-β,collagenの蛋白産生,mRNA発現レベルをELISAおよびreal time PCRにて定量した.さらに血清中のヒアルロン酸についてもELISAによる検討を加えた.In vitroの実験系では,PDGF刺激時のAc-HSCの増殖に対するPAI-1-Iの影響について解析した.【成績】CDAA投与群では肝硬変像を呈する肝線維化を認めたが,PAI-1-Iの投与により肝線維化は有意に抑制された.この際,Ac-HSC数,TGF-β,collagen,および血清ヒアルロン酸もPAI-1-I投与により肝線維化とほぼ平行するように抑制された.In vitro実験系では,PDGF刺激により促進されたAc-HSCの細胞増殖はPAI-1-I存在下で有意に抑制されていた.【結論】PAI-1-IはAc-HSCの細胞増殖とTGF-β,collagenの発現を抑制することにより抗線維化作用を示すことが示唆された.将来的にPAI-1-Iが新規の抗肝線維化薬として臨床に応用できる可能性が考えられた.
索引用語