セッション情報 ポスター

肝炎 他

タイトル P-471:

明瞭な生肉の摂食歴がない急性E型肝炎の2例

演者 添田 敦子(筑波記念病院消化器内科)
共同演者 辻田 智大(筑波記念病院消化器内科), 間宮 孝(筑波記念病院消化器内科), 杉山 弘明(筑波記念病院消化器内科), 設楽 佐和子(筑波記念病院消化器内科), 池澤 和人(筑波記念病院消化器内科), 中原 朗(筑波記念病院消化器内科), 相川 達也(相川内科病院)
抄録 【背景】本邦でのE型肝炎は,土着HEVによる動物由来感染が主な感染経路であり,イノシシ・シカ肉などの生摂取という明瞭な病歴がある報告例が多い.しかし,飼育ブタからもHEVが分離され,加熱不十分な市販のブタ肉を知らずに摂取したことによる感染の危険性や,未報告の感染経路の可能性もある.当院では2010年からこれまでに3例のHEV症例を経験したが,生肉摂取歴が判明したのはうち1例のみであった.今回,明瞭な生肉食の摂食歴がない急性E型肝炎2例の詳細を報告する.【症例1】50歳代男性【主訴】発熱【現病歴】発熱,全身倦怠感,食欲不振のため当院を受診し入院となった.入院時AST2030IU/L,ALT3440IU/L,T-Bil2.7mg/dLであった.また末血に異型リンパ球(9%)を認め,臨床症状・経過から伝染性単核球症を疑ったが,EBVとCMVはともに既往感染パターンを呈していた.退院後の追加検査によってIgA/IgM/IgG classすべてのHEV抗体,およびHEV-RNA陽性で急性E型肝炎と診断した.なお分子系統樹検索では既知のAB581598株の95%と合致しgenotype3型と判明した.【症例2】70歳代男性【主訴】黄疸【既往歴】僧帽弁閉鎖不全症【現病歴】抑うつにて当院精神科にかかりつけであった.8年前からスルピリド,エチゾラム,ニトラゼパムを内服し,これらの処方に変更はなかった.当科受診時には,AST119IU/L,ALT286IU/L,T-Bil20.2mg/dLであった.肝生検で薬物性肝障害に矛盾しないとの所見が得られ,DLSTで上記3薬剤は陽性もしくは偽陽性であり,薬物性肝障害診断基準スコアにて「可能性が高い」に該当した.しかし,退院後IgA/IgM/IgG classすべてのHEV抗体およびHEV-RNA陽性が判明し急性E型肝炎と診断した.【結語】鑑別に苦慮した急性E型肝炎の2例を経験した.明瞭な生肉摂取の病歴がなくても,現在では一部のHEV抗体検査が保険適応となっており,急性肝炎症例ではまんべんなく測定しておく意義がある.
索引用語