セッション情報 ポスター

胃・十二指腸 高齢者

タイトル P-480:

消化器疾患を有する高齢者の不穏に対するジフェンヒドラミンの有用性

演者 松井 謙明(国立病院機構福岡東医療センター消化器肝臓内科)
共同演者 中舎 晃男(国立病院機構福岡東医療センター消化器肝臓内科), 中村 和彦(九州大学大学院医学研究院病態制御内科)
抄録 【目的】近年,高齢化に伴い,消化器疾患を有する高齢者の急性期病院への入院は増加している.高齢者は入院前より認知症を有する場合がある他,入院後に不穏が発症して対処に窮する場面も少なくない.特に消化器疾患を有する場合,食事制限を行うことが多く,これをきっかけに不穏が発症することもある.抗不安薬を用いた鎮静では,筋弛緩作用のために元々筋力が低下した高齢者では転倒等を起こす可能性があり,向精神薬を用いた鎮静でも十分な鎮静が得られないことがある.抑制は本人の意思とは相反する場合が多く,反って不穏を助長することが多い.ジフェンヒドラミンは抗アレルギー薬であるが,睡眠薬あるいは海外においては麻酔薬の補助として用いられることがある.消化器疾患の治療目的で急性期病院である当院に入院した,認知症を有する,あるいは入院中に不穏を発症した高齢者に対し,ジフェンヒドラミン(レスタミン)の投与が有用であったので報告する.【方法】症例は平成21年11月から平成24年5月まで当院に入院し,認知症を有する,あるいは入院中不穏を発症した高齢者8例.入院前の認知症の状態あるいは入院後の不穏の状態を勘案してジフェンヒドラミン内服(30mg~120mg,平均60mg)を行った.【結果】年齢は79歳から94歳(平均年齢85歳),女性3人,男性5人であった.入院の原因となった疾患は感染性胃腸炎3例,悪性疾患2例,その他3例で,入院前に認知症を有すると診断されていた症例は6例であった.入院期間は5日から28日(平均16.5日)であった.ジフェンヒドラミン使用前に他の薬剤や鎮静剤でコントロールがつかなかった症例は4例であった.ジフェンヒドラミン投与が無効で,薬剤切り替えを要した症例はなかった.【結論】ジフェンヒドラミンは筋弛緩作用も少なく,本人の意思表示も維持したまま安全に鎮静を得ることができる.消化器疾患を有した高齢者の入院の際の不穏対策として有用であると考えられた.
索引用語